米国:サバンナリバーで研究炉の使用済燃料からウラン抽出 再開
米エネルギー省(DOE)は8月22日、サウスカロライナ州サバンナリバーサイト(SRS)で国内外の研究炉の使用済燃料から高濃縮ウラン(HEU)を抽出する作業を再開したと発表した。米国内で唯一残存するSRSの再処理施設「Hキャニオン」で、中心設備である第1サイクル・ユニットを今月5日に約5年ぶりで再稼働させたもの。取り出したHEUは天然ウランとの混合により低濃縮ウラン(LEU)に希釈し、テネシー峡谷開発公社(TVA)の核燃料製造会社に輸送。同公社の商業炉用核燃料とする計画だ。Hキャニオンの運転再開は、約1,000体の使用済燃料集合体と高中性子束炉の炉心、最大200基分の処理をSRSに許可した2013年のDOE修正決定記録に基づいて行われており、SRSは同ミッションを2024年までに完了する予定。SRS幹部は、SRS内に貯蔵されている使用済燃料を安全かつ生産的に処分することで、米国の核不拡散政策における役割を果たすとともに、サイト環境のクリーン・アップにも役立つと強調した。米国ではかつて、軍事用プルトニウムの生産やHEUの回収を目的に、DOEがSRSとワシントン州ハンフォードサイト、およびアイダホ化学処理プラント(ICPP)で再処理を行っていたが、1970年代にカーター政権が商業再処理を禁止して以降、使用済燃料は直接処分する政策が進められている。これらのサイトの再処理工場もほとんど閉鎖し、廃止措置を実施中。SRSでは、キャニオン型と呼ばれる2つの再処理施設のうち、すでに閉鎖したFキャニオンで解体作業が完了した一方、Hキャニオンは研究炉の使用済燃料処理用として残されていた。
1950年代に建設されたHキャニオンは現在、放射性核種の抽出が生産規模で可能、かつ放射線の遮へい機能も備わった米国唯一の化学分離工場となった。東西冷戦後は、核関連施設のクリーン・アップ作業や国内外の研究炉から出る核物質と使用済燃料の処分および安定化が主な役割に変更された。内部には5種類の運転ユニットが設置されており、ウランの分離・抽出機能を担う第1サイクル・ユニットを含め4つのユニットがすでに再稼働した。LEUへの希釈を行う最後のユニットも2年以内に運転を再開し、TVAの燃料製造会社に向けたLEUの出荷を2011年11月以来初めて実施するとしている。