全米州議会連盟、原子力発電所の早期閉鎖を防止する政策オプションで報告書
全米50の州議会の活動情報や政策オプションの共有に資する共同組織「全米州議会・議員連盟(NCSL)」は1月26日、早期閉鎖のリスクにさらされている原子力発電所を維持するために、様々な州で法制化が検討中、あるいは法制化に成功した政策オプションなどを報告書に取りまとめた。国内の原子力発電所は過去数十年にわたって安全かつ効率的に稼働し、総発電量の約20%を供給しているにも拘わらず、急速に再構築が進んだ電力市場においては数多くの課題に直面している。NCSLは、州政府が米国の原子力発電所の将来を決定付ける重要な役割を担っているとの認識から、99基の商業炉が立地する30州の背景情報を提供して、この問題への関心を高めるとともに、現状をもたらした政策やトレンド、市場条件などについて一層の議論が行われるよう促したい考え。全米に信頼性のあるクリーン・エネルギーを適正価格で提供する上で、州議会議員や電力規制当局、連邦政府、原子力産業が果たす役割についても、議論が継続されることを意図している。
「原子力をエネルギー・ミックスに維持するための州政府オプション」と題された今回の報告書で、NCSLはまず、2013年以降に6基の商業炉が早期閉鎖され、12基の閉鎖日程が公表されたこと(うち5基は州の政策変更により運転継続の見通し)、さらに数基についても今後数年以内に早期閉鎖の可能性があるという現状を説明した。多くの州議会が原子力発電所の支援政策を模索している理由としては、他のエネルギー源と比べて信頼性が高く(2015年の平均稼働率92%)、CO2を排出しないこと、雇用や税収などの面で地元や州経済に貢献していることを挙げた。早期閉鎖に至る原因については、低価格な天然ガスの生産量増加や電力需要の伸び悩み、連邦および州政府による再生可能エネルギー開発の奨励、自由化された電力卸売市場の構造などに加えて、配電会社と発電事業者間の伝統的な電力購入契約(PPA)に競争上の疑問が投げかけられたことや、容量に応じて価格が設定されるメカニズムが一部で導入されていることなどを指摘した。
その上でNCSLは、原子力発電所の維持を目的とする政策オプション例として、イリノイ州とニューヨーク州が昨年、導入を決定した「CO2のゼロ排出クレジット制度」をケース・スタディとして紹介した。また、電気事業者の販売電力に一定の割合で再生可能エネルギーを含めることを義務付けた「ポートフォリオ基準」に、原子力を含めるための動きが複数の州であったと指摘した。州議会が原子力産業の支援を決議することも有効で、ウィスコンシン州は昨年、原子力発電所の新設モラトリアムを撤回する法案を可決。直ちに効果があるわけではないものの、他の州で同様の抑制政策の見直しを容易にすると述べている。さらに、新たなプラントの建設期間中に事業者が資金調達コストを顧客から回収できるメカニズム(CWIP)も原子力発電所の新設リスクとコスト軽減に効果的だとしており、州政府がこれを認めているジョージア州やサウスカロライナ州では新規の建設計画が2基ずつ進展中である。このほかNCSLは、コネチカット州政府が昨年、PPAを州内唯一の原子力発電所に適用する州法の成立を試みた事例、CO2の排出税やキャップ・アンド・トレードを盛り込むオプション、米エネルギー省(DOE)による建設費の融資保証といった税制上の優遇措置制度にも言及している。