米国:X-エナジー社がペブルベッド高温ガス炉の概念設計 開始
米国メリーランド州で革新的な原子炉設計ソリューションを開発しているX-エナジー社は3月16日、ペブルベッド高温ガス炉「Xe-100」(熱出力20万kW、電気出力7.5万kW)の概念設計を正式に開始したと発表した。熱電併給が可能な「Xe-100」は建設工期が短く、機器の組立も工場でできるという小型モジュール炉(SMR)。燃料としてウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子を用いているため、物理的にメルトダウンの恐れがない設計であるほか、冷却材喪失時においても運転員の介入なしで安全性が保たれるという。米エネルギー省(DOE)も低炭素な発電が可能な次世代原子炉の1つとして、同設計に対して5年計画で最大4,000万ドルの投資支援を行っており、X-エナジー社としては10年以内に「Xe-100」を利用可能にするという目標の達成を目指して開発を進める方針。また、プログラムが概念設計段階に進展するのに合わせ、サザン社傘下で6基の商業炉を運転するサザン・ニュークリア社から、ベテラン専門家を開発チームのプログラム管理コンサルタントとして招いたことを明らかにした。発表によると、同社は概念設計の開始判断を下すのにあたり、基本的な設計パラメーターや準備文書、分析ツール、概念設計段階で提案されている開発範囲、管理プロセス、開発チーム全体の準備状況などを改めてレビュー。この段階の活動を成功裏に実施するには、綿密な計画と成熟した技術基盤、意欲的な労働力が必要であることから、十分な準備が整っていることを外部の専門家で構成される審査パネルが今月8日付けで確認した。また、サザン・ニュークリア社の専門家を招聘したことは、両社間の連携強化という点で重要だとX-エナジー社は指摘。「Xe-100」の商業化と本格活用を進める協力で、両社が2016年8月に了解覚書を締結していた事実に言及した。
米国では、新規雇用と輸出機会を創出する次世代エネルギー技術の開発で世界のリーダーシップを握るため、DOEが2012年から官民折半のSMR商業化支援プログラムを実施中。2つの有望設計を対象に、2022年頃の実用化を目指して4億5,200万ドルの投資を行っている。また、DOEは2016年1月、低炭素エネルギーの生産拡大というオバマ政権の目標を達成するため、先進的な次世代原子炉の設計・建設・運転における重要な技術課題への取り組み支援プログラムを発表。X-エナジー社チームが開発中の「Xe-100」、およびサザン社チームが開発している溶融塩高速炉(MCFR)設計を対象に選定し、コスト折半の複数年計画で最大8,000万ドル投資する方針を表明した。その際に公表されたXエナジー社チーム参加者は、バブコック&ウィルコックス(B&W)社が分社化した原子力事業専門のBWXテクノロジー社、オレゴン州立大学、航空宇宙・エネルギー防衛産業大手のテレダイン・ブラウン・エンジニアリング社、炭素製品製造が専門のSGLグループ、およびDOEのアイダホ国立研究所とオークリッジ国立研究所。従来の商業炉よりも小型で安全性能が高いペブルベッド高温ガス炉は、人口密集地域でも住民の安全性を確保しつつ利用することが可能との認識も示されていた。