WH社製AP1000が英国の事前設計認証審査をクリア

2017年3月31日

DACに署名するONRのサベッジ首席原子力検査官(=左)と、WH社のタウンズ・ムーアサイド計画担当ディレクター©ONR

 英国の原子力規制局(ONR)は3月30日、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代PWR設計「AP1000」が包括的設計審査(GDA)における規制課題51項目をすべてクリアしたことから、ONRと環境庁がそれぞれ設計容認確認書(DAC)と設計容認声明書(SoDA)を発給したと発表した。同設計が安全・セキュリティと環境保全面で英国の厳しい基準を満たしており、同国内で建設・運転し得ることを証明するもので、2012年に仏アレバ社製欧州加圧水型炉(EPR)に発給して以来、2件目。DACとSoDAの発給をもって同設計の採用原子炉で建設開始許可が保証されるわけではなく、建設プロジェクトではサイトに特化した許認可や評価活動などが別途要求される。また、同設計採用炉の安全系部分についてONRが建設を許可する際は、これらが予め必要となる。今回の決定については、英国西カンブリア地方のムーアサイドでAP1000×3基の建設を計画するニュージェネレーション(NuGen)社が、歓迎のコメントを発表。ONRのR.サベッジ首席原子力検査官もGDA完了報告書の中で、今年後半に同社がサイト許可(NSL)申請することを期待していると述べた。

 WH社は2007年にGDAを申請しており、2011年12月に暫定的な設計容認確認書(iDAC)と設計容認声明書(iSoDA)の発給を受けた時点では英国内の採用顧客が未定だったため、審査活動の一時中断を要請。NuGen社がムーアサイド原子力発電所建設計画でAP1000の採用を決定したのを受け、2014年に審査が再開された。AP1000を採用した原子炉は現在、米国のA.W.ボーグルおよびV.C.サマーの両原子力発電所で合計4基、中国でも三門と海陽の両原子力発電所で合計4基が建設中となっている。同社はこの前日、親会社である東芝の事前承認に基づき、米連邦倒産法の再建型破産処理手続をニューヨーク州の連邦破産裁判所に申請したが、建設中プロジェクトの作業は同手続の初期評価期間中も継続すると明言。今回の決定に関しては、これら8基の建設経験がムーアサイド計画で活かされることになるとの認識を示した。

 また、東芝が筆頭株主となっているNuGen社は発表コメントの中で、ムーアサイド計画へのAP1000設計採用を再確認するとともに、GDAをクリアしたことによって建設プロジェクトの遂行リスクが軽減され、同プロジェクトの価値や英国で原子力発電に投資することの重要性が認められたと指摘。今後はサイト許可の申請や発電所の建設・運転・廃止措置に関する許認可と同意の取得に向けて、規制当局と連携していきたいと述べた。同社は2024年頃に最初のAP1000を完成させる計画だが、昨年実施した2回目の公開協議の評価作業が長引いているため、今年第2四半期に予定していた開発同意書(DCO)の申請は見送るとの方針を3月29日付けで明らかにしている。