トランプ政権初の予算教書:ユッカ計画を復活、SMR商業化支援は打ち切り
米国のD.トランプ大統領は5月23日、同政権初の予算教書を2018会計年度(2017年10月〜2018年9月)予算として議会に提出した。3月に公表した予算案の骨子どおり、オバマ前政権が打ち切ったネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料の深地層処分場建設計画の許認可審査活動再開、および中間貯蔵プログラムの開始について新たに予算措置を提案しているものの、原子力発電所の新設計画に対する融資保証プログラムや、官民の予算折半で進めていた小型モジュール炉(SMR)商業化支援プログラムへの予算措置を終了すると明記。米原子力エネルギー協会(NEI)は同日の声明で、連邦政府が使用済燃料の引き取り義務履行に向けた意志を示したことに感謝する一方、米国の原子力産業界が繁栄していく上で必要な連邦政府の投資が、非常に重要な現時点で打ち切られることへの失望感を表明した。国内の既存商業炉99基についても、運転継続を支援する予算措置が含まれていない点に落胆したと述べており、この予算案が最終決定するまでに重要な原子力プログラムが継続されるよう議会とトランプ政権に働きかけたいとしている。
原子力を管轄するエネルギー省(DOE)の予算は、2017年度で承認された予算継続決議レベルから5.6%削減されて280億ドルとなった。このうち、原子力関係の研究開発支援活動を主目的とする原子力分野全体の予算は、28.7%減の7億300万ドル。連邦政府の説明によると、2018年度予算は幅広い民生用原子力産業における初期段階の研究開発支援に集中する方針で、技術が成熟しつつある後期段階の研究開発では特定の企業に利益が出ることから、民間部門で完成させるのが望ましいとした。このため、有望な2つのSMR設計について、開発と設計認証(DC)審査および2020年代半ばの商業化を支援する目的で2012年に開始したプログラムを廃止するとし、現行予算の6,250万ドルを削除。理由として、同プログラムの支援を受けたニュースケール社が今年1月、同社製SMR設計のDC審査を原子力規制委員会(NRC)に申請したことや、テネシー峡谷開発公社(TVA)が昨年5月、将来的なSMR立地に向けて、クリンチリバー・サイトの事前サイト許可を申請した事実に触れた。2018年度は、先進的なSMR開発への支援金2,000万ドルを含む初期段階の次世代原子炉技術に対する投資支援を、「原子力実用化技術」関係の項目に含めている。
放射性廃棄物関連では、統合廃棄物管理システム予算の2,250万ドルと使用済燃料処分研究開発予算6,250万ドルを「核燃料サイクル」関係の研究開発予算から削減する一方、新たに「ユッカマウンテン放射性廃棄物処分場&中間貯蔵」と名付けた勘定科目を設定。既存の2つの勘定科目である「放射性廃棄物処分」と「軍事用廃棄物処分」からそれぞれ9,000万ドルと3,000万ドルを都合し、合計1億2,000万ドルの予算を確保すると提案した。使途の内訳は2011年9月にNRCが停止した深地層処分場建設認可申請審査の再開に9,040万ドル、使用済燃料中間貯蔵施設の開発開始に660万ドル、およびこれら2件の管理運営費合計として2,300万ドルとなっている。米国では放射性廃棄物法に基づき、政府が1998年までに原子力発電所から使用済燃料の引き取りを開始することになっていたが、ユッカマウンテン計画の頓挫により、使用済燃料は全米の原子力発電所サイトで貯蔵中。深地層処分場の許認可審査再開と中間貯蔵計画の開始により、DOEはこの義務の履行に向けた作業を加速できると強調した。