ルーマニア:SMR建設の可能性模索で米ニュースケール社と覚書

2019年3月20日

©ニュースケール社

 ルーマニア唯一の原子力発電設備、チェルナボーダ発電所(70万kW級カナダ型加圧重水炉×2基)を保有する国営原子力発電会社(SNN社)は3月19日、米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)を国内で建設する可能性を探るため、同社と了解覚書を締結したと発表した。
 電気出力6万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール」(=)は今のところ、米国では唯一、原子力規制委員会(NRC)による設計認証(DC)審査が行われているSMRで、商業化への動きは最も進んでいる。同審査は2020年9月にも完了すると見込まれており、ニュースケール社は米アイダホ国立研究所(INL)内における初号機建設計画に加えて、カナダとヨルダンでも同SMRの建設を目指して、許認可申請前審査や実行可能性調査などを実施中である。

 「ニュースケール・パワー・モジュール」はPWRタイプの新しいSMRで、発電に加えて地域熱供給や脱塩、その他のプロセス熱利用に活用することができる。工場内で全面的に組み立てられるほか、モジュールを12基連結することで出力は最大72万kWまで拡大が可能。主要な投資家として、世界的なエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約企業のフルアー社が同社に出資しているが、同SMRであれば100万kW級の大型炉で必要となる初期投資額を大幅に削減しつつ、無炭素な電力を提供できるという。

 今回の覚書を通じてSNN社は、ニュースケール社製SMRの革新的な技術やビジネス関連の情報を入手し、国内での開発・許認可手続および建設という目標の達成に向けた評価を実施する。同覚書は、SMRという画期的な原子力技術に対するルーマニアの関心を表わすものであり、長期的には既存世代の原子炉をそうした技術に取り替えていく方針である。
 SNN社はルーマニアで唯一の原子力発電企業であり、チェルナボーダ発電所の2基はルーマニアにおける総発電量の約20%を供給。クリーンで安全かつ価格も適正な電力を生み出すSMRには、大きな可能性があると見込んでいる。一方、ニュースケール社は、同社製SMRの安全性や信頼性、拡大縮小が可能という特長を紹介していくとともに、同SMRがルーマニアの将来エネルギーの中でどのような役割を果たせるか見極めるため、協力したいとしている。
 SNN社はまた、米エネルギー省(DOE)のR.ペリー長官による談話も紹介。「DOEはニュースケール社製SMRも含め、数多くの革新的発電技術の開発を支援してきたが、最先端の原子力技術とその将来的な可能性には大いに期待している」と述べたことを伝えている。

 (参照資料:SNN社ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの3月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)