IEA報告書:「2018年のCO2排出量拡大でクリーン・エネルギーがさらに必要」
国際エネルギー機関(IEA)は3月26日、昨年1年間における世界のエネルギー消費量、およびエネルギー関係のCO2排出量について分析した報告書「世界のエネルギーとCO2の排出状況」を公表した。
2018年に世界では、好調な経済や一部地域の強力な冷暖房需要に後押しされ、エネルギー需要量が過去10年間で最速のペース(2.3%増)で拡大したと指摘。増加分の45%を満たしたLNGが最適なエネルギー源として浮上したものの、需要量は石炭火力も含めたすべての燃料で増加しているとした。
エネルギー関係のCO2排出量も、2018年に世界中で1.7%増の330億トンを記録。報告書は、二桁ペースで発電量が増加した太陽光や風力であっても、石炭火力の使用が増加した世界で多量の電力需要を満たすには不十分であると指摘している。
報告書によると、2018年に世界の電力需要は4%(23兆kWh)増加し、エネルギー全体の需要量の2倍近い早さとなった。「将来エネルギー」としての電力の地位は揺らいでおらず、このように急速な伸びにより、電力は最終エネルギー消費量の20%を占めつつある。また、増加した発電量は、一次エネルギー需要量の伸びの半分を占めているとした。
電力需要量で増加した分の大半は再生可能エネルギーと原子力が対応しており、この年に世界の原子力発電所による発電量は、前年実績から3.3%(870億kWh)拡大。増加分の9%を満たした計算で、発電量は福島第一原子力発電所事故が発生する以前のレベルに到達している。
このうち半分は、中国で複数の原子炉が新たに運転開始したことに起因するもので、日本でも2011年以降初めて、1年に4基の原子炉が再稼働した点に言及した。また、仏国の原子力発電所が高い稼働率を記録したほか、スイス、台湾、パキスタン、スウェーデンでも、原子力による発電量が増加しているとした。
一方、韓国では新たにメンテナンス関係の規制が導入されたため、発電量が減少。ベルギーでも、安全性に係わる修理を実施するため、複数の原子力発電所が停止したことを明記している。
IEAのF.ビロル事務局長は、「2018年に世界では、エネルギー需要量が2010年以降、最速という異常な伸びを示したが、その半分近くを占めたLNGにとっても再び全盛の年になった」とした。ただし同事務局長は、再生可能エネルギーが大きく伸張しても、世界のCO2排出量は依然として増加している点を指摘。これは、あらゆる分野で一層緊急のアクションが必要であることを改めて示したもので、すべてのクリーン・エネルギー源の開発促進やCO2の排出抑制、エネルギー効率の改善、二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)も含めた技術革新や投資の促進が求められるとしている。
(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)