米X-エナジー社が開発中の小型HTR用燃料製造に原燃工が協力
米国のX-エナジー社は5月3日、商業規模の3重被覆層・燃料粒子(TRISO)製造加工工場「TRISO-X」を建設するため、必要となる機器の供給で日本の原子燃料工業(原燃工)とパートナーシップを構築する了解覚書を4月30日付けで締結したと発表した。
TRISO燃料はウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料で、X-エナジー社が開発中の小型ペブルベッド高温ガス炉(HTR)「Xe-100」(熱出力20万kW、電気出力7.5万kW)に装荷されることになっている。同社は2025年までに「TRISO-X」の操業を開始できるよう、米国のウラン濃縮企業セントラス・エナジー(旧USEC)から設計支援サービスを受ける契約を昨年3月に締結。これに続いて、同年11月には予備設計を共同で進めるための、新しいサービス契約を結んでいる。
今回の覚書によりX-エナジー社と原燃工は、原燃工の東海事業所から商業規模の機器を、テネシー州オークリッジのX-エナジー社施設へ移送するための計画立案を今年から開始する。この協議には、日本のHTR用燃料製造で実際に使用されていたウラン回収機器に関するもののほかに、燃料粒子核の製造、および多数の被覆燃料粒子を固形化した燃料コンパクトの製造に関する協議も含まれるとしている。
X-エナジー社の燃料製造担当副社長は、「TRISO燃料製造加工の世界的リーダーとして、事業の確立に向けた大きな一歩になった」と評価。新型原子炉は将来エネルギーへの橋渡し的存在であり、TRISO-X施設は新型原子炉産業を展開させるカギになるとの認識を表明した。
同社は現在、「Xe-100」の設計作業と並行して、TRISO型燃料の生産技術を確立するパイロット規模の燃料製造をオークリッジで実施している。同社によると、「Xe-100」は建設工期が短くて済むほか、工場内で組立て可能な機器を使用。物理的にメルトダウン発生の恐れが無く、冷却材喪失時も運転員の介入なしで安全性が保たれるという。TRISO燃料についても、多重層でウランを封入する閉じ込め機能により、核拡散抵抗性や安全性が向上すると強調した。発電に加えて地域熱供給や脱塩にも利用できることから、ヨルダンが2017年11月、「Xe-100」の国内建設に関心を表明している。
参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)