ルーマニアで停止中の原子炉増設計画、中国と暫定的投資家協定を締結
ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は5月8日、建設工事が停止中のチェルナボーダ原子力発電所3、4号機(各70.6万kWのカナダ型加圧重水炉)を完成させるため、中国広核集団有限公司(CGN)およびCGN傘下の中・東欧諸国向け投資会社と、プロジェクトの継続に関する暫定的な投資家協定(PIA)を締結したと発表した(=写真)。PIAに基づき、SNNとCGNは今後60営業日以内に、チェルナボーダ3、4号機の完成に向け、技術およびと運営上の基盤となるプロジェクト会社を設置する。この会社は両社の合弁企業になる予定で、CGNとSNNがそれぞれ51%と49%を保有。設置当初の2年間に、建設作業を再開する前段階の重要ステップとして、プロジェクトの継続モデルを構築する方針である。
チェルナボーダ3、4号機は1980年代半ばに本格着工したものの、1989年のN.チャウシェスク政権崩壊により、それぞれ進捗率15%と14%段階の建設工事が1991年に停止。これらを完成させるという政府決定を受け、SNNは2009年にエネルゴニュークリア社をプロジェクト会社として設置した。
しかし、同社への出資を約束していた欧州企業6社は、経済不況等によりすべて撤退した。SNNが新たな投資家を模索するなか、CGNは2011年10月に出資参加の意思を表明。両炉に「CANDU6」型原子炉を供給予定のCANDUエナジー社は2014年7月、CGN傘下の中広核工程有限公司(CNPEC)と拘束力のある独占協力協定を結んでいる。また、SNNは翌2015年11月、両炉の設計・建設・運転・廃止措置に関する協力について、CGNと了解覚書に調印していた。
今回のPIA調印式には、ルーマニアのV.シュテファン副首相とA.アントン・エネルギー大臣に加えて、中国の在ルーマニア大使館・特命全権大使と経済参事官が同席。PIAの内容は、今年4月のSNN株主総会で承認済みであるほか、CGN側も中国国内の承認手続を完了したとしている。
エネルギー省のアントン大臣は、双方が利益を得る形でPIA交渉が妥結した理由として、SNN株主総会による協定内容の承認が大きいと指摘。これにより、3、4号機の建設継続に向けた具体策を実際に開始可能になったと説明している。
(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)