世界中の原子力関係学協会がクリーン・エネルギー研究開発費の倍増を共同宣言

2019年5月14日

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 欧州原子力学会(ENS)の発表によると、世界中で8万人以上の科学者を代表する42の原子力関係学協会が5月13日、仏国南東部のジュアン・レ・パンで、クリーン・エネルギー関係の研究開発費を倍増させるよう求める共同宣言を採択した(=写真)。
 今月末にカナダのバンクーバーで開催される「第10回クリーンエネルギー大臣会合(CEM)」に向け、仏原子力学会(SFEN)が中心となって取りまとめたもので、今後5年以内に原子力関係の研究開発と技術革新用の公共投資額を倍増させるため、最大限の努力を傾注していくと宣言。先進的原子力システムの革新的な応用に重点的に取り組むべきだとしており、それによって将来、クリーン・エネルギーによるエネルギーミックスも可能になると呼びかけている。

 ENSは、各国の政策立案者に対するこの国際的な呼びかけに加わっており、5月28日と29日にCEMで予定されている関係イベントにおいて、原子力技術革新に関する広範な多国間協議が閣僚レベルと実務者レベルの両方で展開されることを期待。原子力に内在するすべての潜在能力を各国のクリーン・エネルギー・ポートフォリオ用に開放するとともに、各国と世界、両レベルの脱炭素化に向けて貢献させたいとの目標を掲げている。
 ENSによると、核分裂と核融合を合わせた原子力研究開発に対する公的支援は、2000年以降、世界レベルで見ても年間で常に約40億ドル程度に留まっている。また、多くの国では民間部門における原子力研究への投資熱意が低下。これは、原子力研究を取り巻く否定的な政治環境や市場環境、財政環境によるものだとした。
 しかし、これに対して原子力産業界は近年、小型モジュール炉(SMR)や第4世代原子炉など、新しい原子炉設計の開発やデジタル化において技術革新の新たな波に取り組んでいる。また、脱塩や地域熱供給、産業界へのプロセス熱供給など、発電以外にも利用する動きも進展中。このようなプロジェクトは、その他のクリーン・エネルギー源とともに、原子力発電の活用で新たな機会を市場にもたらすと期待されるが、それには多額の研究開発資金と新しい技術革新アプローチが必要だとENSは指摘した。

 また、これと並行して近年は、多くの原子力研究開発インフラが時代遅れになってきた。革新的原子炉の開発支援のみならず、核医学開発で必要な放射性同位体の生産にもニーズは広がっている。ENS高等科学評議会のE.プルースト会長は、「欧州原子力共同体の将来的な研究プログラムに対して、EU予算の大幅な増額が必要だ」と断言。核分裂研究開発に対する最近の予算規模、年間5,000万ユーロ(約62億円)では明らかに不十分であり、このままでは次世代原子炉システムの開発であらゆる選択肢をオプションとして残しておくことや、専門的知見をただ維持することさえできないとした。
 同会長はまた、欧州規模で実施される研究・技術革新の促進枠組プログラム「ホライズン2020」では、「クリーンで安定した効率的なエネルギーのプログラム」に12倍以上の予算が割り当てられていると強調。同プログラムの対象には原子力が含まれておらず、このような状況がENSを今回の共同宣言に参加させることになったと説明している。

 (参照資料:ENSの発表資料、SFENの共同宣言、原産新聞・海外ニュース、ほか)