米エネ省による先進的原子力技術の開発支援、第5弾に1,100万ドル

2019年5月27日

 米エネルギー省(DOE)は5月23日、国内の3州で実施されている3件の先進的原子力技術開発プロジェクトに対して、合計約1,100万ドルの支援金を提供すると発表した。

 先進的原子力技術の研究開発を官民のコスト分担方式で進めるというイニシアチブにおいて、DOEは2018年4月に初めて、「財政支援条件の告示(FOA)」で対象プロジェクトを選定。その後、同年7月と11月および今年3月に第2弾~第4弾の選定結果を公表したのに続くものとなる。今回までの5回分でDOEが拠出を約束した支援金は、合計1億2,800万ドルにのぼったが、DOEは今後さらに4年以上にわたり、四半期毎に後続の申請書審査を継続していく方針である。
 DOEのR.ペリー長官は、「米国内では数多くの企業が次世代原子炉を一層安全かつ競争力の高いものとするため、技術を開発中である」と指摘した。トランプ政権は米国の原子力産業を復活・活性化させることを公約の1つとしており、革新的な原子力技術開発で成功を収めるには、このような官民連携がカギになるとの認識を強調している。

 FOAを通じた財政支援条件は下記の3種類。

(1)「新型原子炉設計の初号機(FOAK)開発を目指す大規模な実証準備プロジェクト」

(2)「新型原子炉の設計・技術を商業化する、最良のものに改良する可能性を持った広範な概念・アイデアの提案」

(3)「新型原子炉の設計認証や認可取得など、設計に関する規制上の課題解決を必要とするもの」

 今回は(2)で2件、(3)で1件のプロジェクトが対象に選定されており、1件目はユーティリティーズ・サービス・アライアンス社の「先進的遠隔モニタリング技術」プロジェクト。米国内の既存の原子力発電所で安全性と信頼性を維持あるいは改善しつつ、経済的な持続可能性を達成することが目的である。そのための自動化技術、先進的遠隔モニタリング技術の研究開発・実証で、DOEが約918万ドル、企業側が約408万ドルを負担する。
 2件目は、サウス・テキサス・プロジェクト原子力運転会社(STPNOC)による「火災の確率論的リスク評価(PRA)モデリング技術」の開発と実行に関するもの。DOEと企業側の拠出額はそれぞれ、約94万ドルと約24万ドルとなっている。
 3件目は規制上の課題解決を必要とするプロジェクトで、SCソリューションズ社が先進的原子炉設計のコスト面の効率化を目指す内容。具体的には、非線型の土壌構造における相互作用分析で、ソフトウェアの検証ガイドラインを開発する。官民がそれぞれ、約47万ドルと約12万ドルを負担する計画で、このようなガイダンス文書は、原子力発電所の許認可と建設においてコストの削減を容易にする重要ツールになるとしている。

 (参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)