米デューク社、閉鎖した原子力発電所の廃止措置を50年前倒しで実施へ

2019年6月3日

©デューク・エナジー社

 米国のデューク・エナジー社は5月30日、フロリダ州で2013年2月に早期閉鎖したクリスタルリバー原子力発電所(=写真)3号機(CR3)(89.9万kWのPWR)について、廃止措置作業を当初計画から約50年前倒しし、2027年までに完了させることになったと発表した。
 同社は廃止措置の実施について、オラノ社の米国支社と廃棄物処分会社のノーススター・グループ・サービシズ社による合弁企業「アクセレレーテッド・デコミッショニング・パートナーズ社」と固定価格の契約を交わしており、これにより廃止措置プロジェクトの実施リスクを同合弁企業に移管。予算の超過や不測の事態が発生した場合でも、デューク社は現時点なら十分な資金が廃止措置用の信託基金に確保されており、財政面で顧客を守ることができると強調している。
 この改訂版の廃止措置計画について、米原子力規制委員会(NRC)とフロリダ公益事業委員会(PSC)の承認を得るまでに約1年を要する見通しだが、デューク社では2020年にCR3の廃止措置を開始し、2027年に終了できると予測。発電所用地の再利用に向けて、復旧と再開発が迅速に進むとしている。

 デューク社はCR3が稼働中だった2008年、同炉の運転開始当初の認可期間40年に加えて、運転期間を20年延長するための申請をNRCに行ったが、燃料交換と蒸気発生器取り替えのため、格納容器に開けた開口部で壁面の剥離が発生。約15億ドルという改修経費を勘案した結果、同社はCR3の運転継続を断念した。

 当初の廃止措置計画では、CR3内で放射能が十分減衰するのを待つため、同社は完了までに約60年を要するという「安全貯蔵(SAFSTOR)」方式を選択。少人数スタッフの監視により施設を安全な状態で保管し、本格的な廃止措置作業は2074年までに実施するとしていた。
 しかし今回の発表では、同社は今年3月末現在で約7億1,700万ドルの信託基金を保有しており、廃止措置プロジェクトを早めたとしても顧客に追加請求する心配がない。その上、現行の60年計画の廃止措置モデルよりも30年以上早く、信託基金の残金を顧客に戻せる可能性があるとした。
 同社はまた、コスト面で効果的な方法により廃止措置の第一段階を終えたと指摘。作業全体の完了に向けて、同プラントは入札者を募集する理想的な状態にあるほか、近年は廃止措置サービス業界の競争が激化してコストの低下が見込める点を考え合わせると、前倒しの廃止措置モデルは財政的に実現可能との結論に至ったとしている。

 今回の契約でデューク社は、引き続きNRCから認可された発電所所有者として留まるほか、関係資産や機器類、信託基金の所有権と管理権についてもそのまま保持する。一方のアクセレレーテッド・デコミッショニング・パートナーズ社はNRCの許可を受けた廃止措置事業者となり、同発電所の使用済燃料集合体も含めてサイト内の乾式貯蔵システムをデューク社から購入。大型のコンクリート構造物に格納されたスチール製・使用済燃料キャニスターなど、使用済燃料管理に関わるすべてをデューク社から引き受け、州政府や連邦政府の規則に則して同システムを安全に操業・維持することになる。

 (参照資料:デューク・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)