米エンタジー社、経済的理由でピルグリム原子力発電所を早期閉鎖

2019年6月4日

©エンタジー社

 米国の大手原子力発電事業者であるエンタジー社は5月31日、2015年10月に公表していた方針どおり、マサチューセッツ州のピルグリム原子力発電所(71万kWのBWR)(=写真)を同日の夕方に永久閉鎖したと発表した。
 同発電所は47年間にわたって無炭素な電力を供給し続け、運転認可は2032年まで有効となっていた。しかし、エンタジー社は供給地域におけるエネルギー価格の下落や、構造の偏った卸電力市場で近い将来に改善が見込めないこと、運転コストの上昇により収益が減少したことなどを早期閉鎖の理由として挙げていた。これにより、米国で稼働可能な商業用の原子力発電設備は97基、約10,200万kWとなった。

 エンタジー社の発表によるとピルグリム発電所の閉鎖は、長期の電力売買契約(PPA)を供給事業者間で結ばずに、市場で取引きを行うというマーチャント型の発電事業から同社が撤退し、純粋に電気事業者としての事業に移行する重要な節目となる。
 同社は昨年8月、ピルグリム発電所および2022年に閉鎖が予定されているパリセード原子力発電所(ミシガン州)を予定通り閉鎖した後、廃止措置を当初計画より数十年早く実施するため、両発電所をホルテック・インターナショナル社の子会社にサイトごと売却することで合意したと発表。実際の廃止措置作業は、ホルテック社がSNCラバリン社と合弁で起ち上げた専門企業「コンプリヘンシブ・デコミッショニング・インターナショナル(CDI)社」が実施するとした。
 エンタジー社はまた、2020年4月と2021年4月にそれぞれ閉鎖予定のインディアンポイント原子力発電所2、3号機(ニューヨーク州)についても、同様の理由でホルテック社の子会社に売却する方針を今年4月に公表。ピルグリム発電所も含めたこれら4基はすべて、エンタジー社がマーチャント型発電事業のために保有していた設備であり、すべて閉鎖した後に、エンタジー社による同事業からの撤退が完了するとしている。

 なおエンタジー社は、電力市場の自由化があまり進展していないアーカンソー、ミシシッピー、ルイジアナの3州で5基・約570万kWの原子力発電所を保有・操業中。供給事業者間の直接交渉を電力取引のベースとするこれらの州で5基の運転を今後も継続し、クリーンで信頼性の高い経済的な電力を供給していくとしている。

 (参照資料:エンタジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、および特集「コメンタリー第29回」、WNAの6月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)