日立造船のグループ企業が米TMI発電所で使用済燃料の乾式貯蔵システム 受注
日立造船のグループ企業で、使用済燃料の保管・輸送機器の設計や輸送・コンサルティング業務等を専門とする米国のNACインターナショナル社は6月5日、エクセロン社が今年9月末に1号機を閉鎖予定のスリーマイルアイランド(TMI)原子力発電所に対し、独自に開発した使用済燃料の大容量乾式貯蔵システム「MAGNASTOR」(=写真)を供給することになったと発表した。 エクセロン社は3種類の廃止措置オプションのうち、汚染構造物を一定期間、安全に貯蔵するという「SAFSTOR」をTMI1号機で選択。使用済燃料は閉鎖後に一旦、発電所内の貯蔵プールで保管されるが、これらは2022年末までにすべて、乾式貯蔵施設に移送されることになっている。
NAC社によると、同社の「MAGNASTOR」はモジュール方式で輸送可能な大容量キャニスターを採用した貯蔵システム。2009年に米原子力規制委員会(NRC)から初めて設計承認を取得しており、今回の受注は国外からの案件も含めて7件目となる。PWRであれば37体の使用済燃料集合体、BWRの場合は87体まで貯蔵が可能であり、他の競合システムと比べて16~28%多く使用済燃料を貯蔵できるとしている。
今後はTMI発電所において、乾式貯蔵施設の設計・建設やハードウェアの供給、同施設への燃料積み込み作業といったサービスを提供して、乾式貯蔵への移行を支援。サイト内における新しい独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI)の設置も支援することになる。
米国では1970年代後半から1980年代初頭にかけて、多くの原子力発電所で敷地内の使用済燃料貯蔵プールが満杯になり始め、乾式貯蔵も含めて貯蔵容量を拡大する代替オプションが必要になった。乾式貯蔵においても、少なくとも最初の1年間は使用済燃料を貯蔵プール内で冷却。その後は不活性ガスを充填したスチール製のシリンダー容器に収めた上で、追加のスチールやコンクリート等で覆い、輸送や貯蔵にともなう使用済燃料からの放射線を遮へいする方針である。
NRCは1986年に初めて、使用済燃料乾式貯蔵施設の設置をサリー原子力発電所に対して許可したが、乾式と湿式のどちらも住民の健康と安全、および環境を防護する上では適切との認識を示している。しかし、2001年の9.11同時多発テロや2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、連邦議会では貯蔵プール内での火災の発生リスクを懸念する意見もあり、NAC社に加えて、TNアメリカズ社やホルテック・インターナショナル社などが独自の乾式貯蔵システムを供給。米国における乾式貯蔵への移行は徐々に進展中となっている。
(参照資料:NACインターナショナル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)