仏フラマンビル3号機、配管溶接部の修理で運転開始がさらに遅れる可能性

2019年6月21日

二重構造の格納容器を貫く配管の溶接部は、壁2枚の中間部に位置しており、修理が非常にし難い状態©ASN

 仏国で建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(FL3)(PWR、163万kW)で、主蒸気管を含む2次系配管溶接部に品質上の欠陥が見つかった件について、原子力安全規制当局(ASN)は6月20日、格納容器の壁を貫いている配管の溶接部については運転開始前に修理を終えるよう、19日付けの書簡でフランス電力(EDF)に命じたと発表した。

 FL3は、仏国初のフラマトム社製欧州加圧水型炉(EPR)として2007年12月から建設中だが、原子炉容器鋼材の組成異常など複数のトラブルにより、当初2012年に予定されていた完成日程は大幅に遅れている。
 最新のスケジュールでは、FL3は2019年第4四半期に燃料を装荷し、2020年の運転開始が見込まれていたものの、運転開始前にこれらの溶接部を修理した場合、同炉の起動はさらに遅れて2022年末になるとEDFは予想。20日付けの発表によるとEDFは現在、ASNの今回の決定がFL3計画のスケジュールとコストに及ぼす影響について分析中であり、数週間以内に同計画の今後について詳細な改定版を公表するとしている。

 配管溶接部で「品質上のバラツキ」が認められたのは、最初の総合点検を実施していた2018年2月から3月にかけてのこと。再点検を行った溶接部148か所のうち、33か所に欠陥のあることが判明し、EDFは修理を進めていた。
 しかしEDFは昨年中、格納容器の2重の壁を貫通する配管の溶接部8か所に関して、標準から逸脱した状態のまま維持するアプローチを提案。この提案は、ASNとその諮問組織である原子力耐圧機器常設専門家委員会(GP・ESPN)が審査することとなり、GP・ESPNは今年4月、逸脱部分の性質と数の多さから、EDF提案を受け入れる上で大きな障害になるとの見解を示した。
 EDFはまた、ASNに宛てた6月7日付け書簡の中で、同炉が2020年に運転開始した後の2024年頃に8か所の溶接部を修理する可能性についても、ASNの意見を求めた。これに対してASNは今回、修理は同炉の起動前に実施することが技術的に適していると指摘。起動後まで延期すれば、原子炉の安全性を実証する上で様々な問題が生じると述べ、この件の基本的な解決策は起動前に修理を終えることだと強調している。

 FL3と同様にEPR設計を採用した原子炉としては、2005年にフィンランドで着工したオルキルオト3号機が世界最初のもの。事業者のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は今月19日、建設スケジュールのさらなる見直しにより、8月末より前に同炉で燃料装荷する可能性は無くなったと発表した。
 一方、2009年と2010年に中国でそれぞれ着工した台山原子力発電所1、2号機は、2018年12月に1号機が世界初のEPRとして営業運転を開始。2号機も、今年の5月下旬に初臨界を達成している。

 (参照資料:ASNEDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)