英国で温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロとする法案 可決

2019年6月28日

法案発効の指示書に署名するBEISのC.スキッドモア・エネルギーとクリーン成長担当閣外大臣©BEIS

 英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は6月27日、国内すべての温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに実質ゼロとすることを、法的拘束力のある目標として掲げた法案が可決・成立したと発表した。
 同法案は、GHG排出量を1990年レベルから少なくとも80%削減するとした「2008年気候変動法」の改正法となるもの。BEISが2017年10月に公表した「クリーン成長戦略」を前進させる内容で、GHGの排出量削減を図りつつ低炭素産業を中心に経済成長も維持するという「クリーン成長」を、英国の近代的な産業戦略の中心部分に据えている。目標に法的拘束力をもたせたのは、世界主要7か国(G7)のなかでも英国が最初であり、その他の国が追従すべき道を英国が先駆的に開拓中だと強調している。

 BEISの発表によると、英国は産業戦略を通じてGHG排出量をすでに42%削減した一方、72%増という経済成長を達成。2030年までに環境保護関係の仕事に従事する「グリーン・カラー」雇用が200万人規模に拡大し、低炭素経済に関わる輸出総額も年間1,700億ポンド(約23兆1,800億円)に成長すると見込んでいる。
 2050年までにGHG排出量の実質ゼロ化という目標は、世界でも最も意欲的なものの1つだが、これは独立の立場の諮問組織である気候変動委員会が勧告していた。実質ゼロということは、大気中に放出されたGHGが植樹政策や二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)等の技術により相殺され、バランスの取れた状態になることだと説明している。

 今回の法案は、下院・省別特別委員会のR.リーブス委員長が6月12日付けで議会に提出していたが、英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長はその際、「(原子力産業界にとって)間違いなく有益なニュースだ」とコメント。「原子力発電所は数十年にわたって、一貫して信頼性の高い低炭素なエネルギーを大規模に供給してきたが、GHG排出量の実質ゼロを達成する上でも重要な役割を果たす。だからこそ、経年化が進んだ既存の原子力発電所のリプレースで、政府が必要な支援を提供することが非常に重要になる」とした。また、「新規の原子力発電所が建設されれば、我々が必要とする低炭素電力が供給されるだけでなく、英国中で数千人規模の雇用が継続的に提供されるだろう」と強調していた。

 (参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)