ベルギーの送電会社、独自調査により脱原子力後の発電容量不足を警告

2019年7月4日

 ベルギーのブリュッセルに本拠地を置く送電会社のエリア・グループは6月28日、ベルギーの総発電量の約50%を賄っている商業炉全7基を予定通り2025年末までに全廃した場合、発電容量の不足分がこれまでの予測よりも拡大するとの調査結果を公表した。
 同社の発表によると事態の緊急性は増してきており、電力の供給保証を持続するには体系的なセーフティ・ネットが必要になるとした。このため、5月の総選挙で発足したばかりの暫定政権と次期連邦政府に対しては、深刻な容量危機に陥ることを避けるため、必要となる資源をすべて期限までに必ず確保することを要求。昨年講じられた努力にも拘わらず、ベルギーでは脱原子力の時期を遅らせるシナリオも含めて、現段階でいかなるシナリオにも対応する準備ができておらず、もはや時間的猶予はあまり残されてないと訴えている。

 調査結果のキーポイントとしてエリア社は、ドイツなどの近隣諸国で石炭火力からの離脱が加速しているため冬季の電力輸入に悪影響がおよび、ベルギーが脱原子力への対応で2025年時点に必要とする容量は、2017年後半に実施した前回調査の360万kWから390万kWに拡大したと指摘。また、近隣諸国の脱石炭火力の加速は、脱原子力達成前の2022年から2025年の期間でさえ、ベルギーで100万kWを超える追加容量が必要になることを意味するとした。
 このような必要性を考慮すると、連邦政府が今後、容量補填メカニズム(CRM)の導入努力を続けることは非常に重要で、CRMによりベルギーは、2025年以降もエネルギーの供給保証を維持するための、堅固なセーフティ・ネットを得るとしている。
 この件に関してエリア社は、たとえ原子力設備の一部を更新した場合でも、必要な設備容量を期限までに全面的に準備するための投資(体系的介入)は必要であり、連邦政府がCRMの早期導入を最優先とすることを要請。エネルギー市場を容量市場で補うような規模の大きいCRMの導入は、脱原子力後のエネルギー供給を保証する際、効果的なソリューションになるとした。また、このCRMは採用技術面で中立的でなければならず、コストも可能な限り低く、かつ欧州連合(EU)の法律に沿ったものでなくてはならないとしている。

 また、連邦政府に対する「実施要請」のなかでエリア社は、例えばドール原子力発電所4号機やチアンジュ3号機の運転期間を延長するなど、脱原子力を一層緩やかに進めるという代替シナリオも効果が大きいとした。ただし、この場合でも相当量の代替容量が必要になるほか、運転認可を更新するなど、原子炉のアップグレードが必要。シナリオそれぞれについて適切な方策が要求され、その影響や取られるべきアクションについても明確でなければならないため、代替容量を確保するのと同じ様に、原子力発電所の所有者と直ちに協議を開始することが重要になると同社は指摘している。

 (参照資料:エリア・グループの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)