英国政府、新設計画に対する資金調達モデルの評価結果についてパブコメ開始

2019年7月26日

 英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は7月22日、新規原子力発電所建設プロジェクトの資金調達モデルとして検討している「規制資産ベース(RAB)モデル」の実行可能性評価の結果を公表し、10月14日までの期間に一般からのコメントを募集すると発表した。
 BEISによると、原子力発電所の建設段階から出資者が一定のリターンを受け取れるというRABモデルでは、民間から資金調達する際の発生コストを抑えられる可能性がある。これにより電気料金も削減され、消費者や納税者は支払う金額に見合った価値を最大限に拡大することができると結論付けている。

 英国では現在、EDFエナジー社が唯一、南西部のサマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所(160万kWの欧州加圧水型炉×2基)建設計画を実行中。しかし、完成発電所からの電力買取で英国政府が導入を決めた差金決済取引(CfD)では、行使価格が高すぎて電気料金が高騰しかねないとの懸念が根強い。また、2011年の福島第一原子力発電所事故以降、安全性確保のためのコストが上昇しているほか、再生可能エネルギー源の競争力も高まっている。
 このような背景から、日立製作所がホライズン社を通じて、ウェールズ地方で進めていたウィルヴァ・ニューウィッド原子力発電所建設計画は、資金調達面で同社と英国政府が折り合わず凍結。西カンブリア地方でムーアサイド原子力発電所建設計画を進めていたNuGen社は、同計画に原子炉を供給予定だったウェスチングハウス社の倒産申請を受け、筆頭株主の東芝が新設事業から撤退する判断を下したため、昨年11月に解散が決議された。
 これらを受けて英国政府は、サイズウェルC計画など後続の新設プロジェクトでは資金調達が適切に行われるよう、新たなアプローチを考案する必要があると認識。BEISの担当大臣が昨年6月、RABモデルの実行可能性を評価すると議会で説明した後、英国政府は今年1月、その評価結果を夏頃に公表する考えを示していた。

 評価報告のなかでBEISはまず、競争が一層激化しつつあるエネルギー市場で原子力発電所の新設プロジェクトを成功に導くには、消費者にとって費用対効果の高い民間資金を呼び込めるような、持続可能な資金調達モデルが不可欠であると指摘した。RABモデルは通常、下水道など国内の独占インフラ設備建設に対する資金調達に利用されており、規制担当者は当該インフラのユーザーから規定料金を徴収する許可を建設事業者に授与。RABモデルで資金調達されたインフラでは、過去20~30年の間に民間セクターから相当額の投資金を集めているとした。
 こうしたことからBEISは、原子炉の運転開始前から投資家に規定のリターンを約束するRABモデルなら、新規原子力発電所建設プロジェクトのコストを抑えることができると評価。同モデルの利点を最大限に活用するため、以下の特徴を持つものが必要だと述べた。
 すなわち、発生確率はごくわずかでも影響力の大きい特定のリスク事象に対し、政府は支援パッケージを通じて投資家と消費者を防護する。また、投資家と消費者の間でコストとリスクを公平に分け合うシステムを一定の経済規制体制の下で構築する。さらに、この体制を運営する規制担当者を置くとともに、新設プロジェクトを支援するため、建設・運転の両段階を通じて、エネルギー・サプライヤーから資金調達するルートを確保するとしている。

 (参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月23日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)