豪州のエネ相、下院常任委に原子力の導入条件に関する調査を要請

2019年8月5日

 オーストラリア(豪州)連邦政府のA.テイラー・エネルギー相は8月2日、豪州で原子力発電を導入した場合に必要となる条件や状況を見極めるため、下院・環境エネルギー常任委員会のT.オブライエン委員長に調査の実施と報告書の作成を要請した。
 これは、連邦政府が将来的に原子力の導入を検討する際、現在の保守政党連合政権にせよ、あるいは労働党政権に代わった場合であれ、小型モジュール炉(SMR)も含めた原子力発電が豪州経済や環境に及ぼす影響や安全性など、適切かつ実行可能であるか見極めるのが目的。エネ相は今年中に報告書を完成させたいとしているが、実際の調査はこの要請が同常任委員会で審議・承認された後に実行される。
 調査の指揮を執ることになるオブライエン委員長は、「ここ10数年間で原子力の利用に関して豪州で行われる最初の調査であり、豪州議会としても初めて引き受ける画期的なものだ」と指摘。原子力の有用性を立証するため、様々な質問項目を準備するとした一方、同委の構成員には、与野党や無所属など様々な議員が含まれている点を強調した。

 豪州はウラン資源の埋蔵量が世界最大であるにも拘わらず、2つの連邦法により商業用原子力発電所の建設と運転を禁じている。近年は、これらの禁止条項の撤廃を求める動きが活発化しており、サウスオーストラリア州政府の核燃料サイクル委員会は2016年5月、今後数10年間に低炭素電源の1つとして原子力が必要になる可能性に言及した。
 また、鉱物資源の探鉱や採掘、製錬等の企業を代表する鉱業評議会(MCA)は2017年と2018年、「感情的な誇張を除いた客観的科学の議論に基づけば、原子力はクリーンで経済的かつ信頼性のある電源として、将来的にも世界中で重要な役割を果たし続ける」と連邦政府に提言していた。

 エネ相がオブライエン委員長に宛てた書簡によると、連邦政府はこれまで、CO2排出量の削減に向けた国際的義務を履行しつつ、適正価格で信頼性の高いエネルギーを供給できるようなエネルギー・システムの構築を支援してきた。原子力発電の導入モラトリアムは今後も依然として有効と見られるものの、豪州のエネルギー供給システムは、新たな発電技術や消費者の需要パターンに沿って変化していると指摘。これと同時に、豪州の電力市場では、間欠性の低炭素発電技術の容量が大幅に増加しているとした。
 このような状況からエネ相は、原子力発電の導入で必要となる条件等の調査を同常任委員会に依頼したもの。具体的な調査項目として以下の点を挙げた。すなわち、放射性廃棄物の管理・輸送・貯蔵、国民の健康と安全、環境影響、エネルギーの供給信頼性と適正価格、経済的な実行可能性、立地コミュニティとの関わり合い、従業員の能力、セキュリティ関係の影響、国民の同意――などである。

 (参照資料:オブライエン常任委員会委員長の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)