ロシア貯蓄銀行、トルコのアックユ発電所建設計画に4億ドル融資へ
ロシア最大の商業銀行であるロシア連邦貯蓄銀行(スベルバンク)は8月21日、トルコでアックユ原子力発電所(120万kW級のロシア型PWR×4基)建設プロジェクトを進めているロシア国営原子力総合企業ロスアトム社のトルコ子会社(ANPP)に対し、7年間で4億ドルを貸し付けると発表した。
同国初の原子力発電設備となるアックユ発電所の建設費用は、これまでロシアの連邦政府予算とロスアトム社の自己資金で賄われてきた。今回の決定により、同行はアックユ建設プロジェクトに融資を行う最初の金融機関になる。
アックユ建設プロジェクトでは2018年4月、地中海沿岸メルシン県のサイトで1号機の建設工事が本格的に始まっており、トルコ共和国の建国100周年にあたる2023年までに同炉の運転を開始する計画だ。部分的建設許可の下、昨年12月から作業中の同2号機についても、今年の秋までに本格着工する予定で、原子炉系統の安全性に関わる部分も含めた全面的な作業許可が規制当局から下りるのを待っている。
約200億ドルといわれる同発電所の総工費は、原子力分野では世界初という「建設・所有・運転(BOO)」方式を採用したことにより、ロシア側がすべて負担。発電所の完成後、トルコ電力卸売会社(TETAS)が発電電力を15年間購入して返済することになる。また、ロスアトム社は、ANPP社株の49%までをトルコや第三国の企業に売却する方針だが、2017年6月に同社株49%の購入で合意していたトルコの大手エネルギー関連企業3社の連合体とは最終合意に至らず、売却先の模索を続けている。
スベルバンクの株式資本は、ロシア憲法の下でルーブル価の安定を第一の責務とするロシア連邦中央銀行が50%保有している。スベルバンクの発表によると、同行がロスアトム社と今回のような規模で国際プロジェクトを共同実施するのは初めてのこと。ロシアとトルコ両国政府の協定下で行われているプロジェクトでもあり、同行はロスアトム社の協力関係が新たな段階に移行するとした。また、今回の取引により、スベルバンクは原子力産業界における財政パートナーとして、その信頼性が改めて認識されたとしている。
なお、ロスアトム社は今年7月から、同発電所で勤務する人材の教育訓練を同社の技術アカデミーで開始した。請け負った建設プロジェクトの一環として人材育成サービスを提供しているもので、1号機の運転開始までに合計1,300人の専門家を育成する計画である。
(参照資料:スベルバンク(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)