DOE副長官、先進的原子力技術開発に対する米国の取組み理由を説明
米エネルギー省(DOE)のD.ブルイエット副長官は8月28日、同省が全精力を傾注して進めている先進的原子力技術開発に関する論説記事を原子力エネルギー局(NE)のブログに掲載し、D.トランプ政権は国内原子力産業の再生・復活に向けて、不言実行で取り組んでいると強調した。
同副長官はまず、米国が原子力技術革新分野で世界のリーダー的立場を獲得する際、必要となる先進的原子炉開発への支援など、同政権が過去2年間ですでに11項目を実行に移したと指摘。これらの事例は、民生用原子力部門に対する同政権の誓約を証明するものであり、これらを通じてエネルギー生産の拡大とエネルギー自給の確保、米国民にさらなるチャンスがもたらされることを目指すとした。
また、原子力施設の建設・運転を一層効率的かつ低コストで実現するための先進的技術を、全米50社以上の企業が開発中であることについて、「世界の新規市場を支配することも可能な素晴らしいチャンスだ」と説明。成功裏に進められれば、最終的に新たな雇用の創出やCO2の排出量削減、米国経済のさらなる増強にさえ繋がるとしている。
ブルイエット副長官はまた、米国で約30年ぶりの新設計画として、ボーグル原子力発電所3、4号機がジョージア州で建設中である点に言及。両炉が完成すれば、米国における原子力の復活が決定付けられるとしたほか、国内最大級のインフラ建設プロジェクトとして建設ピーク時に9,000名分の雇用を生みだすとともに、2021年の運転開始後も800名分の正規雇用がサイト近隣区域で確保されるとした。
副長官はさらに、2026年までにアイダホ国立研究所(INL)敷地内での運転開始を目指して、米国初の小型モジュール炉(SMR)開発が順調に進展中であると指摘した。官民パートナーシップの下で、DOEは2013年以降、ニュースケール社製SMRの設計や許認可手続を支援。同設計の認証(DC)審査がすでに、第2、第3段階をクリアした点を強調した。
副長官によると、小型炉関係の開発ではDOEは国防省とも連携しており、早ければ2023年にもマイクロ原子炉の実証・配備を実行に移す。一層小型で輸送が可能、工場でも製造できる発電システムであれば、遠隔地域の軍事施設で高い信頼性とレジリエンス(回復力)を発揮するとしている。
DOEはさらに、小型の高温ガス炉(HTR)など先進的原子炉開発支援に、過去2年間で1億7,000万ドル以上を投入した。これには、X-エナジー社の小型HTR「Xe-100」で使用する3重被覆層・燃料粒子「TRISO」の製造加工工場への建設支援も含まれており、完成すれば世界でも類を見ないHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の加工施設が生まれることになる。
このほかDOEは近年、「極限環境下の溶融塩(MSEE)センター」計画にも乗り出しており、溶融塩炉で使用する溶融塩の物質的特性を研究する。また、昨年9月に成立した「2017年原子力技術革新対応法(NEICA2017)」の下で、高速中性子の照射施設「多目的試験炉(VTR)」の開発プロジェクトにも着手。次世代の原子力産業にとって重要な新型燃料や資機材の試験を、米国内で安全かつ効率的に行えるとした。
「NEICA2017」の下ではまた、今月中旬に先進的原子力技術の実証を目的とした「国立原子炉技術革新センター(NRIC)」の開発イニシアチブも開始。NRICではINLの主導により、民間部門が開発した原子炉概念の性能試験や実証に必要な支援を提供し、許認可取得と商業化を加速していくとしている。
(参照資料:米エネ省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)