中国政府、初の原子力安全白書を発行
中国の国務院新聞弁公室は9月3日、中国政府が初めて発行した包括的な「原子力安全白書」について記者会見を開催し、主な内容の紹介とその詳細説明を行うととともに、記者からの質問に回答した。
発表によると、6月末現在に中国では47基の商業炉(営業運転開始前の炉を含む)が稼働中だが、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル2以上の事象が発生したことは一度も無く、建設中の11基についても品質管理を徹底している。また、原子力発電の開発利用を開始して以降、中国は常に原子力安全を重要な国家責任と見なしており、安全性の確保を前提とした原子力技術の開発を遵守。世界で最も厳しい基準に従い、原子力安全の概念に基づいて、法律による規制と行政による管理・監督、原子力業界の自主管理、技術面や人材確保面の支援、社会参加、国際協力などを備えた原子力安全ガバナンス体制を強化中だと説明した。
さらに、福島第一原子力発電所事故を引き起こした極端な自然災害の発生確率は、中国の原子力発電所サイトでは非常に小さいとした。同時にこのような事故に関して、サイトの包括的な再評価も実施しており、原子力発電所の安全性を改善。電力と冷却水の供給、緊急支援で全体的な改善・強化の取り決めを行ったことを明らかにしている。
登壇した生態環境省・副大臣で国家核安全局(NNSA)の劉華・局長はまず、同白書の主な内容として、中国における原子力安全確保の歴史や、その基本原則と政策、規制の概念と実践状況などを紹介した。
2012年11月の中国共産党第18回全国代表大会以降、習近平・最高指導者を中核とする共産党中央委員会が、原子力安全を国の安全保障システム全体に組み込んでおり、そのコンセプトとして「開発と安全管理」、「権利と義務」、「自律性と共同作業」など、それぞれ2つの概念を平等に扱うとした。
また、原子力安全政策と規制を包括的に整備しており、国家の原子力安全戦略を実行しつつ安全管理要件を厳格化。安全規制慣行の包括的な共有が可能になるよう、安全監督システムの改善も継続的に行っている。
同白書ではさらに、中国の原子力安全レベルを客観的に評価することや、原子力安全文化と広報活動の有効性を積極的に実証することを提唱。これに加えて、世界の原子力安全の運命共同体構築に中国が貢献するため、安全性関連の国際交流を強化し、透明性が高くて公正、協力的かつ参加国すべてに有益な原子力安全システムの確立を目指すとしている。
同白書はまた、全体状況の説明のなかで、原子力安全の「基本原則」として、法令の遵守や安全第1主義、明確な責任体制、厳格な管理、徹底した防護策、独立性の高い規制などを挙げた。中国は原子力利用の「開発」、「中程度の開発」、「積極的な開発」、「安全で効率的な開発」の4段階において、安全第1の原則を順守。5年毎に原子力安全計画も策定・実施しており、「開発と安全管理」の2つの目標の相互推進と統合を促進していると指摘した。
なお、劉華・局長は「開発と安全管理」のバランスに関する記者からの質問に答え、中国では商業炉47基のほかに19基の民生用研究炉と臨界装置、18の核燃料サイクル施設、2つの低中レベル放射性廃棄物処分施設が稼働中であることを明らかにした。これらの安全性は世界でも最高レベルにあるとした上で、原子力安全管理システムに関する国際原子力機関(IAEA)のピアレビューも、すでに4回受け入れ済みだと述べた。
同副局長はまた、今年初めに国務院が新たな原子力発電所開発プロジェクト2件を承認した事実に言及。これらは福建省の漳州原子力発電所と広東省の恵州太平嶺原子力発電所で、安全審査を実施した後、正式な建設プロセスに入るとの見通しを示している。
(参照資料:中国政府(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月3日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)