サウジ、韓国製SMR「SMART」の国内建設で、同設計の商業化と改善に協力
サウジアラビアで原子力発電の導入計画を担当する政府機関「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市公団(K.A .CARE)」は9月17日、韓国製の一体型小型モジュール炉(SMR)「SMART」の商業化を促進するため、「韓国・サウジアラビアの包括的原子力研究開発の協力覚書(MOU)」を韓国政府と締結した。具体的には、サウジ国内における「SMART」炉の建設に向け、MOUから支援を受けて同設計をサウジの標準設計とするための許認可および建設許可を取得するとしている。
これは、オーストリアのウィーンで国際原子力機関(IAEA)の通常総会が開催されるなか、韓国・科学技術情報通信部(MSIT)が18日付で明らかにしたもの。MOUではこのほか、「SMART」炉の安全性確保と実用化のための技術協力が盛り込まれている。
両者はまた、「韓国・サウジアラビア原子力共同研究センターの設立と運営に関する協約」を同じ日に締結。サウジでの共同研究センター開所により、将来の原子力研究院設立を支援するとともに、SMART炉での革新的な要素技術開発と、安全解析コード等の共同研究を行う。
「SMART」炉は、海水脱塩と熱電併給が可能なシステム一体型モジュラーPWRで、熱出力と電気出力はそれぞれ33万kWと10万kW。韓国原子力研究院(KAERI)が中東諸国向けに開発したSMRで、サウジとは2015年3月に結んだ協力契約協定により、SMART炉を同国内で2基以上建設する可能性を探るため、2018年までの3年間に予備調査の実施と人的資源の共同構築を約束した。
また、2015年9月にKAERIとK.A .CAREが締結した協力契約では、「SMART」炉を将来的に、世界市場に共同で売り込むことが視野に入れられていた。
サウジ側も原油資源を温存しつつ、国内の電力需要急増に対処することを目的に、2040年までに原子力発電設備を1,200万kW~1,800万kW導入することを計画。2017年7月に内閣が承認した「国家原子力プロジェクト」では、1基あたり120万kW~160万kW程度の大型炉をベースロードの電力供給用に2基建設するほか、小型の「SMART」炉を複数建設するとしている。
MSITの今回の発表によると、両国は「SMART」を共同建設する前に、サウジ国内の標準設計認可取得を目指す方針。2015年12月から2018年11月まで実施した建設前設計(PPE)共同事業では、サウジ側が1億ドル、韓国側が0.3億ドルを拠出したが、これには原子力関係の研究者や韓国内の原子力企業(韓電技術、斗山重工業、ポスコ建設など)が参加した。
また、同炉が世界のSMR市場で競争上の優位を確実に確保できるよう、新技術を組み合わせて経済性や安全性、運転上の柔軟性などが大幅に向上した次世代の「SMART」炉を開発するとしている。
また、MOUの締結前に開催されたKAERIとK.A .CAREの会談では、「SMART」炉のPPEが完了した後、両者は後続の建設協力案について具体的な議論を進めており、4つの協力分野を特定した。それらは(1)標準設計認可と建設許可の取得、(2)ビジネス・モデルの設定、(3)初号機の建設、(4)共同輸出の基盤構築――で、これらを通じて、サウジで「SMART」炉を建設するための準備作業をスピーディに進めるとした。また、現時点でSMRの導入を計画している中東や東南アジアの諸国に「SMART」炉を輸出できるよう、積極的に協力していくとしている。
(参照資料:韓国MSIT(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの9月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)