ウクライナ原子力発電公社、協力拡大目指し米原子力産業界と会合
ウクライナの民生用原子力発電公社のエネルゴアトム社は9月17日、原子力発電所の燃料調達先などで米国との協力関係を拡大するため、同社のY.ネダシコフスキー総裁が米原子力産業界代表団との会合をウィーンで開催したと発表した。
ウクライナは1991年のソ連邦崩壊により独立国となったが、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故直後は、最高会議の決定により新規原子力発電所の建設を中断した。しかし、国内の電力不足と国民感情の変化を受けて、1993年にその建設モラトリアムを撤回している。2014年に親ロシア派のV.ヤヌコビッチ政権が崩壊して以降、クリミアの帰属問題や天然ガス紛争等により、旧宗主国であるロシアとの関係は悪化しており、ロシアからのエネルギー輸入依存から脱却するため、ウクライナは国内15基のロシア型PWR(VVER)で使用する原子燃料についても、調達先の多様化を推進中。米ウェスチングハウス(WH)社やカナダのカメコ社など、ロシア企業以外から調達する手続を進めている。
発表によると、米国代表団は国際原子力機関(IAEA)の第63回通常総会に合わせてウィーン入りしていたもので、関係する連邦政府機関や科学組織の代表が原子力産業界の代表とともに、エネルゴアトム社代表団との会合に出席した。米国の原子力産業界からは、大型原子炉メーカーのWH社とGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社に加えて、軽水炉型の小型モジュール炉(SMR)開発を進めているホルテック・インターナショナル社とニュースケール・パワー社、および小型の高温ガス炉を開発しているX-エナジー社の代表が参加。このほか、原子力関係コンサルティング企業のEXCELサービス社、日立造船の子会社であるNACインターナショナル社、アルゴンヌ国立研究所、および原子力エネルギー協会(NEI)の代表が含まれた。
会合の司会は米商務省国際貿易局(ITA)のN.ニカフタール産業分析国務次官補が努めており、原子燃料供給源の多様化や使用済燃料の管理、およびウクライナの原子力発電所における運転期間延長といった分野について、ウクライナと米国間の協力拡大が議論された。
なお、同国のチェルノブイリ原子力発電所で、世界でも最大規模の使用済燃料・乾式中間貯蔵施設(ISF-2)を建設しているホルテック・インターナショナル社は9月23日、設備の包括的なコールド試験が8月に完了し、閉鎖済みの1~3号機から使用済燃料を受け入れる準備が整いつつあると発表した。21,000体以上の燃料集合体を3分割する許可を始め、個々の運転認可がウクライナ国家原子力規制検査庁(SNRIU)から発給され次第、ISF-2は正式に使用が開始されるとしている。
ホルテック社はこのほか、ウクライナで同社製SMRの「SMR-160」建設計画を進めるため、今年6月に同社とエネルゴアトム社およびウクライナの国立原子力放射線安全科学技術センターの3者で国際企業連合を結成した。エネルゴアトム社とはすでに2018年3月、「SMR-160」の国内建設のみならず、機器製造の一部をウクライナで国産化するための協力覚書を締結。欧州やアジア、アフリカ地域に「SMR-160」技術をプロモートする製造拠点をウクライナに築く方針である。