EDFエナジー社:「ヒンクリーポイントC計画のコストが最大で約15%増加」
英国南西部のサマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所(HPC)(160万kWのPWR×2基)建設計画を進めているEDFエナジー社は9月25日、総工費が2017年7月時点の予測額の196億ポンド(約2兆6,000億円)から、さらに19億~29億ポンド上昇し、215億~225億ポンド(約2兆8,600億円~2兆9,940億円)になるとの最新見通しを明らかにした。これは、2017年に試算した完成日程の遅延リスク(1号機は2025年末の完成が15か月遅延、1号機の完成から12か月~18か月後に完成する2号機では9か月遅延)が増大してきたことによる。プロジェクトの利益率も、当初予定の約9%が2017年時点で約8.5%に低下したのに続き、今回の見通しでは7.6%~7.8%に縮小すると予測。それでも同社は、同建設計画では差金決済取引(CfDs)が採用されるため、「国内の顧客や国民には何の影響もない」と強調している。
CfDsでは、新規発電所の発電電力を政府がストライク・プライスと呼ばれる固定価格で買い取るが、市場の卸売価格がこれを下回った場合は政府がEDFエナジー社に差額を支払い、逆の場合はEDF側が差額を支払う。この制度に関しては、ストライク・プライスが高すぎて電気料金が高騰しかねないとの懸念が根強く、2018年にビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.クラーク大臣(当時)は、HPC計画に続く新規の原子力発電所建設計画についてはすべて、低コスト化を目指して民間主体の資金調達モデルを適用する方針を明らかにした。
HPCの建設サイトでは、2018年12月に1号機の原子炉系統部分で最初のコンクリート打設が行われた。EDFエナジー社の発表によると、今年6月には同炉の原子炉系統部分で、原子炉建屋と安全系を設置する共通基盤が完成。これに続く大きな作業目標は2号機用共通基盤の完成で、これは今年初頭の発表どおり2020年6月を予定しているとした。
コストの増加は具体的に、地盤の難しい状態を反映したもので、掘削作業は予定よりも高額になると同社は述べた。サプライヤーとの協力で策定した「運営アクション計画」の改定版でも、設計上の機能を完成させるには追加コストが必要になると指摘。これは英国では初めて、同炉にフラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)設計を採用したことによると説明した。
プロジェクト管理の担当者は今の所、2025年末に1号機で送電開始するという日程を堅持しているが、その達成に向けて、プロジェクト管理組織が監督する「運営アクション計画」が導入されつつある。これには、英仏両国のEDFグループ・エンジニアリング・チームに加えて、付属する作業の契約業者や機器・システムの供給業者も関係することになるとしている。
(参照資料:EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月25日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)