仏国最古のフェッセンハイム1、2号機、来年2月と6月に運転終了へ
仏国すべての原子力発電所を所有・操業しているフランス電力(EDF)は9月30日、仏国の稼働中原子力発電所の中では最古のフェッセンハイム1、2号機(各92万kWのPWR)を、それぞれ2020年2月22日と6月30日に永久閉鎖するため、申請書を規制当局と担当大臣である環境連帯移行相に提出したと発表した。
これは、EDFと仏国政府が9月27日に調印した合意協定に基づいて行われた。同協定では、2015年8月に成立した「緑の成長に向けたエネルギー移行法」に準じて、同発電所を早期閉鎖させる際の仏国政府によるEDFへの補償が明記されている。
EDFは2017年1月と4月の理事会で、「フェッセンハイム発電所の運転認可の無効化は、建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(FL3)が起動した時点で効力を発揮する」、などの条件を承認した。しかし、昨年7月にEDFは、FL3の主蒸気管を含む2次系配管の溶接部に品質のバラつきが認められたため、燃料初装荷のスケジュールを2019年第4四半期に繰り延べると発表。原子力安全規制当局(ASN)も今年6月、FL3の格納容器の壁を貫いている配管の溶接部については、運転開始前に修理を終えるようEDFに命じており、同炉の起動はさらに遅れて2022年末になる見通しである。
このためEDFは今回、FL3の完成を待たずにフェッセンハイムの2基を閉鎖する判断を下したと見られている。
「緑の成長に向けたエネルギー移行法」は、原子力発電シェアを現在の75%から2025年までに50%まで削減する」としているほか、「原子力発電設備を現状レベル(6,320万kW)に制限する」と定めている。フェッセンハイム発電所の閉鎖は、欧州加圧水型炉(EPR)設計を採用して建設されているFL3の起動に向け、同法を遵守するための前提条件となっており、2016年までに同発電所を閉鎖するとしていたF.オランド前大統領の公約が、遅ればせながら果たされることになる。
なお、同大統領の政策を踏襲するE.マクロン大統領は2018年11月、これらの方針を現実的で経済的、かつ社会的にも実行可能な条件下で達成するため、原子力発電シェアの50%までの引き下げ日程を10年先送りし、2035年までとする方針を表明。この年までに、国内の原子炉58基中14基の90万kW級原子炉を永久閉鎖するとしている。
EDFと仏国政府が交わした合意協定によると、同発電所の早期閉鎖に対する補償は以下の通り。
(1)運転停止後に発生する諸経費、基本原子力施設(BNI)税、解体経費、職員の再訓練費として、分割払いの初回分が停止後の4年間にEDFに支払われる。これらの合計総額は約4億ユーロ(約470億円)に上る見通し。
(2)収入損失に対する補償として、後続の支払が同発電所のこれまでの発電量や2041年までの市場価格等に基づいて行われる。
(参照資料:EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)