米ARC社のNa冷却式SMR、カナダのベンダー設計審査で第1段階をクリア

2019年10月2日

©ARCニュークリア社

米国を本拠地とするアドバンスド・リアクター・コンセプツLLC(ARCニュークリア)社のカナダ法人「ARCニュークリア・カナダ社」は10月1日、第4世代のナトリウム冷却高速炉技術に基づいて開発中の先進的小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」が、カナダ原子力安全委員会(CNSC)の提供する予備的設計評価サービス(ベンダー設計審査)の第1段階を首尾良く完了したと発表した。

同社のN.ソーヤーCEOはこれについて、「(「ARC-100」が生産する)低コストで信頼性の高い無炭素エネルギーを、カナダのみならず世界の市場に送り出すという当社ビジョンが具体的に大きく進展した」と明言。エネルギー部門で急成長中のSMR技術において、同社が真にリーダー的存在であることを、顧客となる可能性があるカナダのニューブランズウィック(NB)州その他の州政府、および世界中の市場に知らせる出来事だとした。
同CEOはまた、「風力や太陽光といった間欠性の再生可能エネルギーは、パリ協定などCO2排出量削減目標の達成において重要な役割を担うが、負荷追従能力を備えた当社の技術「ARC-100」であれば、安定したエネルギー供給によって、再生可能エネルギー源が世界のエネルギー需要を満たせるよう支援することができる」と説明。風が吹かず陽の照らない日であっても、病院や学校、各家庭および企業に対して安定的なエネルギー供給を約束すると述べた。

同審査はベンダーの要請により実施される任意の評価サービスで、事業者が建設許可等の申請を実際に行う前に、当該設計がカナダの規制要件を満たしているか評価。実際の要件に照らしたレベルの高い同審査を通じて、設計上の問題点などを早い段階でフィードバックすることが可能になる。審査は第3段階まであり、「ARC-100」のほかに米ホルテック・インターナショナル社のSMR設計や、テレストリアル・エナジー社の小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)などが審査中となっている。

液体ナトリウムを冷却材に使用する「ARC-100」は、電気出力10万kW。発電に加えて、従来の大型炉が排出する使用済燃料など、放射性廃棄物をリサイクルできるという特長がある。また、燃料を補充せずに最長20年間稼働できるよう設計されているほか、固有の安全性も備えており、電源喪失事故が発生した場合でもメルト・ダウンは起こらないとしている。
ARCニュークリア社は「ARC-100」の許認可取得と建設に関して、すでに2017年8月、米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社から協力合意を得ている。また、カナダNB州で同設計の商業化を進めるため、州内でポイントルプロー原子力発電所を所有する州営電力会社とも昨年7月、協力を決定。これにより、「ARC-100」実証炉を同発電所の敷地内で建設する可能性が高まったほか、NB州を「ARC-100」技術に基づく先進的SMR製品の中核的研究拠点や製造拠点とする道が拓けたとしている。

(参照資料:ARCニュークリア社CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)