仏国で建設中のEPR:燃料装荷を2022末に延期、コストも15億ユーロ超過
最新鋭の欧州加圧水型炉(EPR)設計を採用して仏国で建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(FL3)(PWR、163万kW)について、事業者のフランス電力(EDF)は10月9日、格納容器の2重壁を貫いている2次系配管の溶接部について、ロボットを使って修理工事を行うと発表した。これにともない、燃料の装荷は2022年末に延期され、建設コストも15億ユーロ(約1,774億円)増加し、124億ユーロ(約1兆4,665億円)になるとの見積り結果を明らかにしている。
2007年12月に着工したFL3の完成は、当初は2012年に設定されていたが、原子炉容器鋼材の品質問題など様々なトラブルにより大幅に遅れている。EDFは9月21日、FL3で年末までの予定で温態機能試験の第2段階を開始したものの、今回の決定により、同炉の運転開始は2023年にずれ込むと見られている。
今年5月に仏原子力安全規制当局(ASN)が公表したFL3建設サイトのモニタリング報告によると、主蒸気配管の溶接部における(品質面での)逸脱をEDFがASNに報告したのは2017年初頭のこと。これらの配管には通常よりも厳しい設計・製造要件が課されるが、破断する可能性は極めて低く、安全性保証文書に基づく破断影響調査の実施は見送られた。
機器の機械特性など、品質の向上を目指すEDFとサプライヤーのフラマトム社は、これらの品質要件の強化を決めたが、それらが溶接担当の下請業者に適切に示されることはなかった。
これに加えてEDFは2018年3月、これらの配管で包括的な事前点検を実施した際、溶接部で複数の欠陥を検知した。これらは製造工程の完了時に検知されるべきもので、EDFはこれにより、主要な2次系すべての溶接部について点検を行わざるを得なくなった。
ASNの認識では、溶接部におけるこのような品質の逸脱や欠陥はすべて、配管の溶接作業を請け負った下請業者に専門知識が不足していたことと、EDFが実施した下請業者の監督に不手際があったことを露呈している。
2018年7月に、EDFは逸脱が認められた溶接部で修理を実施したが、その際、(原子炉建屋内でアクセスが難しい)格納容器の2重壁を貫通する溶接部8か所については、作業対象から除外した。
同年12月にASN宛てに送ったファイルの中で、EDFはこれら8か所には十分な品質があり、破断の心配がないことを保証。しかしASNは、諮問機関の仏放射線防護原子力安全研究所(IRSN)や原子力耐圧機器常設専門家委員会(GP・ESPN)らの協力を受け、今年に入ってからも同ファイルの検証を継続。6月にはEDFに対し、FL3の運転を開始する前にこれら8か所の修理を終えるよう命じていた。
EDFはこれらを修理するシナリオ3種類について評価を行っており、それを受けてASNはEDFに宛てた今月4日付けの書簡の中で、それらの技術的な実行可能性についてコメント。その中でEDFが選択した遠隔操作・修理ロボットを使ったシナリオは、配管内側の修理を高精度で実施できるよう設計されており、運転中の原子炉用に開発された技術であるほか、2重壁貫通部の修理にも適しているとした。
このためEDFは、2020年末までにASNから同シナリオに対する承認を取得し、修理作業を開始する考えである。
(参照資料:EDF、ASNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月9日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)