GEH社、ポーランドで「BWRX-300」の建設可能性を探るため現地企業と覚書

2019年10月23日

 GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は 10月21日、ポーランドで同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」を建設する可能性を探るため、同国最大の化学素材メーカー「シントス社(Synthos SA)」と協力していくことで合意し、了解覚書を締結したと発表した。
 シントス社は合成ゴムなどの製造で知られる大手企業で、CO2を排出しない発電技術による電力を需要に応じて適正価格で、信頼性の高い専用電源から得ることに関心を持っている。今回の覚書で両社は具体的に、「BWRX-300」の建設可能性調査をポーランドで共同実施することで合意。また、同国におけるエネルギー部門の近代化や現実性を踏まえた脱炭素化達成など、ポーランドが抱えるエネルギー問題への取組みでSMRが果たす役割に期待をかけるとしている。
 一方、ポーランド政府は昨年11月、公開協議に付した「2040年までのエネルギー政策(PEP2040)」(ドラフト版)の中で、2033年までに出力100万~150万kWの原子力発電初号機の運転を開始し、その後2043年まで2年毎に、追加で5基(合計出力や600万~900万kW)建設していくと発表。これらの原子力発電設備で、国内電力需要の約10%を賄うとしていた。

 GEH社の発表によると、「BWRX-300」は自然循環を活用した受動的安全システムなど、画期的な技術を採用した出力30万kWの軽水炉型SMR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースとなっており、原子力産業界で深刻な課題となっているコスト面の対策として、開発設計の全段階を通じてコストが目標内に収まるよう管理するアプローチを採ったという。
 これにより同設計は、コンバインドサイクル・ガス発電や再生可能エネルギー、その他の発電技術に対しても、コスト面で競争力があるとGEH社は強調。1MWあたりの資本コストも、既存の大型炉やその他の軽水炉型SMRとの比較で最大60%削減するとしており、このようなSMR技術に注目し、ポーランドでクリーン・エネルギーの利用オプションも提唱しているシントス社への期待を述べた。
 シントス社側も、「クリーンなSMRを活用することで石炭火力から脱却する機会が増し、産業界やポーランド全体に良い影響が出る」とコメントしている。

 なお、GEH社は今年5月、同設計についてカナダで申請していた許認可申請前ベンダー審査が始まったと発表した。今月初旬には、バルト三国の1つであるエストニアでも同SMRが建設可能かを調査するため、同国のエネルギー企業フェルミ・エネルギア社と協力覚書を締結している。

 (参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの10月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)