チェコで2040年までの発電システムに関する報告書:新規原子炉の必要性 強調
チェコの産業貿易省は10月21日、国営送電会社(CEPS)が取りまとめた「(国内の発電システムに関する2040年までの)中期的適性評価予測報告(MAF CZ 2019)」で、国内の電源が今後大幅に減少していくと予測されたことを踏まえ、国内2つの原子力発電所で新規原子炉の建設準備を進めるなど、電力消費量をカバーするための努力が必要だと訴えた。
CEPSの最新報告書によると、チェコにおけるエネルギーの自給と電力供給に大きな影響を及ぼす重要なファクターとして、経年化した石炭火力発電所が徐々に閉鎖されていくことや、総発電量の約3分の1を賄う既存の原子力発電所で2030年代に一部の運転期間が満了すること、再生可能エネルギー源の開発も限定的、ということがある。このまま状況が改善されなければ、チェコは早ければ2030年初頭から次第に電力を輸入するようになると指摘している。
チェコ政府は2015年5月に公表した「国家エネルギー戦略」のなかで、原子力発電シェアを当時の約35%から2040年までに60%近くまで増加させる必要があると明記。同戦略のフォロー計画として、この翌月に閣議決定した「原子力発電に関する国家アクション計画(NAP)」では、化石燃料の発電シェアを徐々に削減するため、原子力と再生可能エネルギーが重要な役割を果たすとしていた。
NAPはまた、既存のドコバニとテメリンの両原子力発電所で1基ずつ、可能ならば2基ずつ増設する準備の必要性を指摘。特にドコバニ発電所では、既存の全4基が2035年から2037年の間に運転を終了するため、原子炉の増設を優先的に行うとしている。
「MAF CZ 2019」は、欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)が欧州全体の電源状況について取りまとめた「中期適性予測(MAF)」を補完するための、国別報告書となる。同報告書はシナリオA(基本版)とシナリオB(低炭素版)の2つを提示しているが、どちらも2040年までにドコバニ原子力発電所で全4基の運転がすでに終了していると想定。バッテリーや燃料電池等から車両の動力を得る「エレクトロモビリティ」の開発が盛り込まれている。
CEPSのM.ドゥルチャク会長によると、これらのシナリオでは既存電源の閉鎖にともない、チェコは2030年以降、少しずつ電力の輸入に頼ることとなり、電力輸出を行っている現状から需給バランスは根本的に変化。2040年までに必要な輸入量はシナリオAで230億kWh、Bでは最大300億kWhに達するとした。
これに加えてシナリオAでは、新規電源を増設しなかった場合、「1年間に供給力不足が生じる時間の予測値(LOLE)」が2040年までに合計678時間に達するリスクがある。シナリオBに至っては3,622時間になる危険性さえあり、現状を維持するための十分な電力の確保は決定的に重要な課題となる。
これらを踏まえてK.ハブリーチェク副首相兼産業貿易大臣は、「これ以上時間を無駄にしている余裕はなく、チェコがエネルギーを自給し十分な電力供給を確保できるよう、失われる電源を埋め合わせていかねばならない」と述べた。欧州の法制に従い、チェコは2025年から2035年までの期間の「戦略的備蓄」に向けて具体的な準備を進めており、原子力発電設備の建設については明確なスケジュールを設定。これに沿って、ドコバニ発電所における新規原子炉の建設準備作業を集中的に続けるほか、テメリン原子力発電所についても、原子炉の増設に関する協議を5年以内に開始しなければならない。チェコにとって、新たな原子炉の戦略的建設計画は無くては不可欠だと強調している。
(参照資料:チェコ産業貿易省(チェコ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)