ヨルダン、米X-エナジー社製SMRを2030年までに建設する基本合意書に調印
米国のX-エナジー社は11月15日、同社製の小型ペブルベッド式高温ガス炉(HTR)「Xe-100」(熱出力20万kW、電気出力7.5万kW)(=図)を2030年までにヨルダン国内で建設するため、基本合意書(LOI)をヨルダン原子力委員会(JAEC)と交わしたと発表した。同社とJAECは2017年11月、「Xe-100」の建設に向けて、技術的なフィージビリティと開発準備状況を評価するための了解覚書を締結。今回のLOIで建設プロセスを加速するとしており、2030年までにヘリウム冷却型の「Xe-100」を4基備えた合計電気出力30万kWの原子力発電所をヨルダンで建設し、同設計で使用する3重被覆層・燃料粒子「TRISO」の供給を目指すとしている。
X-エナジー社によると、「Xe-100」は物理的にメルトダウンの恐れがないHTR設計であり、冷却材喪失時も運転員の介入なしで安全性が保たれる。機器類を工場内で組み立てられるため工期が短縮され、コストも大幅に削減できるとした。
ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆するTRISO燃料については、元々米エネルギー省(DOE)が開発した技術に基づくことから、テネシー州のオークリッジ国立研究所内に同社のプロトタイプ製造施設が存在する。同社はさらに、商業規模の製造施設「TISO-X」を2025年までに操業開始するため、米国内のウラン濃縮企業セントラス・エナジー社(旧USEC)と予備設計を共同で進める契約を2018年11月に締結。必要な機器の供給に関しても、日本の原子燃料工業(原燃工)と協力していく覚書を今年5月に結んでいる。
今月11日のLOI締結に際しては、ワシントンDC駐在ヨルダン大使館の大使が主催する記念式で、X-エナジー社のK.ガファリアン会長とJAECのK.トゥカン委員長がLOIに署名した。これには、同社のC.セルCEOとJAECのK.アラジ副委員長が同席。このほか、両者の代表団とDOE、商務省、原子力産業界の代表者らが参加した。
JAECは、ヨルダン国内のエネルギー供給保証を目的に民生用原子力発電プログラムの開発を進めており、この要件を満たす上で最良の原子炉設計を選択するため、評価プロセスを実行中。首都アンマンの東85km地点のアムラで100万kW級のロシア型PWR(VVER)を2基建設することで、2013年10月にロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社を選定したが、その後の建設資金調達交渉が上手くいかず、2018年6月にJAECはこの取引の破棄を発表している。
一方、SMRについては海水脱塩や地域熱供給にも利用できることから、ヨルダン政府は大型炉の建設プロジェクトと並行して導入の可能性を検討していた。2016年12月には、運転員の教育訓練用を兼ねる多目的の韓国製「ヨルダン研究訓練炉(JRTR)(熱出力0.5万kW)」が、同国初の原子力設備としてヨルダン科学技術大学内に完成。ロシアとの協力においても、ロシア製SMRのフィージビリティ・スタディ(FS)を共同実施することでJAECが合意したと、2018年5月にロスアトム社が発表した。
JAECはまた、2017年3月に、韓国原子力研究所(KAERI)が中東諸国向けに開発した小型炉「SMART」(電気出力10万kW)を、ヨルダン国内で2基建設することを想定したFSの実施で合意。これ以外では、英ロールス・ロイス社や米ニュースケール・パワー社とも、それぞれが開発中のSMR設計についてFSを実施するとしている。
(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)