米規制委と加安全委、初の共同技術審査にテレストリアル社の溶融塩炉 選択
カナダのテレストリアル・エナジー社は12月4日、米原子力規制委員会(NRC)とカナダ原子力安全委員会(CNSC)が非軽水炉型の原子炉設計に関する最初の共同技術審査で、同社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)設計が対象に選ばれたと発表した。 同社のIMSRは第4世代のSMR設計で、電気出力は19.5万kW。同設計の技術面については2018年12月以降、カナダの規制要件に対する適合性をCNSCが予備的に評価する「ベンダー審査(VDR)」の第2フェーズに入っている。
テレストリアル社としては、IMSRの最初の商業用実証炉をカナダで建設した後、同社の米国法人がIMSRを北米その他の市場で幅広く売り込む方針で、NRCに対してはすでに2017年1月、同設計をNRCの設計認証(DC)審査にかけるため、2019年後半にも申請書を提出すると表明済み。今年2月からは米エネルギー省(DOE)の支援金を受けるとともに、NRCによる許認可手続き前の準備活動が始まり、テレストリアル社は2020年代後半にもIMSR初号機が起動できるよう、規制当局や産業界のパートナーとともに同設計のエンジニアリングを完成させるとしている。
NRCとCNSCは今年8月、新型原子炉やSMRの技術審査を共同実施する目的で、協力覚書(MOC)を締結した(=写真)ばかり。NRCが審査を実施中、あるいはかつて審査を行った設計について、ベンダーが建設・運転することを提案した場合、CNSCは同MOCの下、NRCの審査結果を取り入れることができる。同様にNRC側も、CSNSがベンダーの要請に基づいて実施するベンダー審査や許認可プロセスの結果、得られた見識を自らの審査で活用することが可能である。
このMOCは、両者が2017年に締結した了解覚書(MOU)の協力項目を拡大する内容で、新型原子炉とSMRの技術に関する規制面の活動に加えて、これらの技術開発における経験や良好事例を一層共有していくためのもの。両者が協力して技術審査にあたることで、規制面の効率性を向上させるとともに、設計面の安全・セキュリティ確保という共通の目標達成が促進されるとした。
このような協力においては、米加双方の規制枠組や許認可プロセスにおける隔たりを認めつつ、相手側の審査で判明したエンジニアリング関係事項や基礎科学的な項目を、可能な範囲内で活用することになる。
MOC調印に際してCNSCのR.ヴェルシ委員長は、「世界的に見ても新型炉やSMRの開発は急速に進展中で、これらに対する関心も高まっている。このような革新的技術の開発と建設を安全かつ効率的に進めるため、規制関係のリーダーであるCNCSとNRCは協力していく」と述べていた。
NRCのK.スビニッキ委員長も、「このような先進技術が早いペースで浮上して来るので、規制当局としては技術を最新化するイニシアチブなどに歩調を合わせていかねばならない」と説明している。
(参照資料:テレストリアル社、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月6日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)