カナダのNB州政府、既存原子力発電所敷地内でのARC社製SMR建設を支持
カナダ東部ニューブランズウィック(NB)州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発大臣は12月9日、米ARCニュークリア社が開発中の先進的小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」(電気出力10万kW)について、州内唯一の原子力発電設備であるポイントルプロー発電所敷地内で、商業規模の実証炉を建設するという同社カナダ法人(ARCニュークリア・カナダ社)の計画を支持すると発表した(=写真)。
大型炉から出る使用済燃料のリサイクルも可能という「ARC-100」は、第4世代のナトリウム冷却高速炉技術に基づいており、今年10月にはカナダ原子力安全委員会(CNSC)が提供する予備的設計評価サービス(ベンダー設計審査)の第1段階を完了した。ホランド大臣は、安全で信頼性が高く、経済的にも競争力のある低炭素なエネルギー源となるSMRの商業化をARC社が目指しているとした上で、優れた安全運転実績を持つポイントルプロー発電所には経験豊かな運転員もいることから、SMR実証炉の建設サイトに適していると指摘。同サイトで「ARC-100」を少なくとも2基、引き受けることが可能との考えを表明している。
カナダの連邦政府はSMRのような次世代原子力技術について「国民が低炭素経済におけるエネルギー需要を満たしつつ、一層クリーンで安全な社会を構築する一助になる」と認識しており、将来は世界のSMR市場でリーダー的立場を得ることを目標としている。
カナダ国内のオンタリオ州、サスカチュワン州、NB州の州政府も今月1日、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた多目的のSMRをカナダ国内で建設するため、3州が協力していくとの覚書を締結。NB州はこの中でも、世界水準のSMR開発で国内リーダーとなる目標を示しており、すでに2018年7月、英国籍のMoltexエナジー社が開発中の「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」について、商業規模の実証炉を2030年までにポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設すると発表した。
ARCカナダ社との協力に関してもNB州は同じく2018年の7月、州営電力のNBパワー社を通じて協力することで合意。NBパワー社はポイントルプロー原子力発電所の所有者であることから、同発電所敷地内で「ARC-100」初号機の建設可能性を探るとしていた。
NB州のホランド大臣は、SMR技術導入の意義に触れ、たとえ送電網につながれていない遠隔地のコミュニティに対してもクリーンで低コストな電力を供給することであり、エネルギー多消費産業には低炭素で安定したエネルギー供給を約束できるとした。また、この技術がカナダ全土のみならず世界中で採用されれば、カナダは経済成長と輸出機会の拡大チャンスを得ることになると述べた。
州政府としては、SMR技術から同州が多大な恩恵を得ると考えており、ARCカナダ社のような企業との協力でSMR建設への道を拓くとともに、SMR開発を支援する世界的なリーダーとなる方針。また、世界レベルのSMR供給チェーンを構成する主要要素となる態勢も整いつつあると強調した。
(参照資料:NB州政府、ARCカナダ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月10日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)