韓国の官民原子力使節団、ロシアの海外原子力事業に参加申し入れ
韓国の産業通商資源部(MOTIE)は12月12日、官民合同の原子力貿易使節団が10日から12日までモスクワを訪問し、ロシアが世界中で展開する原子力事業のサプライ・チェーンに韓国原子力産業界が参加を申し入れたことを明らかにした。
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社と実施した「ハイレベル協議」、およびロシアと韓国双方の原子力発電企業約60社による「共同原子力発電協力セミナー」などを通じて、両国の原子力産業界がグローバルなサプライ・チェーン協力を強化することで、双方の産業競争力を高めることを呼びかけたとしている。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年6月、国内の原子力発電所を徐々に削減して2080年頃までに脱原子力を達成すると宣言する一方、原子力輸出については産業界を積極的に支援する方針を表明。国内で原子力の有望分野が廃止措置や放射線関係に限られていくなか、産業界と人材を維持する観点から政府は原子力輸出等への産業構造転換を促している。
原子力貿易使節団の派遣は、9月の「原子力発電輸出戦略協議会」でMOTIEが発表した「原子力発電の全段階における輸出促進案」のフォローアップ措置となるもの。すでに11月下旬にチェコ、今月初旬にはポーランドに派遣済みであり、今回のロシアへの派遣は3回目になると説明した。
発表によると、ロシアへの官民合同使節団はMOTIEの原子力発電産業政策官に加えて、韓国の原子力発電輸出産業協会(KNA)、韓国水力・原子力会社(KHNP)、斗山重工業、現代エレクトリック社、および原子力発電所資機材関連の中小企業19社の代表者で構成された。「原子力発電の全段階における輸出促進案」は、主要政策として(1)全ての段階で顧客の特別仕様の輸出戦略を取る、(2)「チーム韓国」方式で全方位の海外マーケティングを展開する、(3)輸出の支援環境で技術革新を図る――を打ち出しており、これに基づき11日にロスアトム社との「ハイレベル協議」を開催した。
同協議では、MOTIEのシン・ヒドン原子力発電産業政策官とロスアトム社側からK.コマロフ副総裁が出席し、双方の原子力輸出政策を共有したほか、ロシアの各種海外事業における協力案、協力体系の構築案などを議論。シン原子力発電産業政策官は、「業界間で実質的な協力を議論するため、官民すべてが参加する定例的な協力の機会の設定が重要だ」と述べ、双方がそのための実務協議を進めていくとした。
また、双方の原子力産業界の約60社から合計150名以上が参加した「韓ロ共同原子力発電協力セミナー」と、「韓ロ原子力発電協力の夜」では、大規模な海外原子力事業を展開中のロシアに対し、韓国側は欧州と米国の両方で設計認証を取得した韓国製原子炉「APR1400」の安全性をアピール。高い技術力を持った韓国の原子力産業界は、ロシアの最適なパートナーであると強調した。ロシアの機器調達システムや参加企業、製品、技術なども紹介され、双方のサプライ・チェーンの連携に向けた情報交換と質疑応答を実施。これにともない、参加企業間で100件以上の事業協力相談が行われたという。
さらに、両国の企業同士、および韓国の原子力発電輸出産業協会とロシアの商工会議所の間で協力覚書を2件締結。MOTIEはこのような事業協力セミナーや使節団の派遣を2020年から定例化し、長期的観点の下で協力の基盤を構築しつつ、定例的な官民合同協議のチャンネルを早期定着させるために努力していくとしている。
(参照資料:MOTIE(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)