ロシアが開発した世界初の海上浮揚式原子力発電所、極東ペベクで送電開始

2019年12月20日

©ロスアトム社

 ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は12月19日、世界初の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)「アカデミック・ロモノソフ号」(=写真)が極東地域北東部のチュクチ自治区管内、ペベクの隔絶された送電網に送電を開始したと発表した。
 同社のA.リハチョフ総裁は「これにより、このFNPPは世界で初めて小型モジュール炉(SMR)技術に基づく原子力発電所になった」とコメント。ロシアのみならず、世界の原子力産業界にとって記念すべき節目になったと評価、極東地域でペベクという新たなエネルギーの中心地を生み出す大きな一歩を踏み出したとしている。

 FNPPは2018年4月、建設場所であるサンクトペテルブルクのバルチック造船所から、燃料を装荷しない状態で出港。同年10月に経由地である北極圏のムルマンスクで燃料の初装荷を完了し、運転開始前の包括的な試験を実施した。今年3月、FNPPに搭載されている出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」2基で出力100%を達成し、同ユニットの主要機器と補助機器、および自動プロセス制御システムで安定した運転性能を確認。8月下旬には、砕氷船1隻と曳船2隻にともなわれて、最終立地点のペベクに向けてムルマンスクを出発しており、9月初旬に到着していた。

 初併入に先立ち、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)はFNPPに対して、運転許可と送電網への接続許可を発給している。また、これに至るまでにロスアトム社は、FNPPからチュクチ自治区の高圧送電網に電力を送る陸上施設を完成させたほか、熱供給システムの建設で膨大な作業を実施したと説明。このシステムにFNPPを接続する作業は、2020年に完了予定だと述べた。
 ロスアトム社によると、「アカデミック・ロモノソフ号」は将来、一群のFNPPを陸上設備とともに建設するパイロット・プロジェクトに相当する。出力30万kW以下のSMRであれば、ロシア北部や極東地域における遠隔地、送電網の規模が小さい場所、あるいは送電網自体が来ていない場所であっても、電力供給が可能になるとした。
 SMRはまた、燃料交換なしで3年~5年間運転を継続できるため、交換コストをかなり削減することができる。遠隔地でよく用いられる再生可能エネルギーの場合、出力の変動を高額で環境汚染度の高いディーゼル発電や燃料電池で補わねばならないが、SMRは電力多消費ユーザーに対しても途絶することなく、確実に電力の供給が可能。このような利点からロスアトム社は、SMRの輸出も視野に入れていることを明らかにした。

 (参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月19日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)