フィンランドで建設中のOL3、営業運転開始が2021年3月にさらに延期

2019年12月23日

OL3©TVO

 フィンランドでオルキルオト原子力発電所3号機(OL3)(PWR、172万kW)を建設中のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は12月19日、先月時点で2020年9月にずれ込んでいた同炉の定常的な発電開始予定がさらに遅延し、2021年3月になると発表した。
 OL3の建設工事は2005年8月に本格的に開始されたが、工事を請け負った仏アレバ社と独シーメンス社の企業連合によると、燃料の初装荷は現在の最新日程で2020年6月、送電網への初接続は同年11月にそれぞれ先送りされた。理由としては各種のシステムで実施中の試験の進行が遅れていることと、搬入されたスペア・パーツに欠陥が認められた点を指摘。中でも補助ディーゼル発電機については、システム試験時に欠陥パーツがいくつか組み込まれていたことが判明しており、代わりのパーツが搬入されるまで数か月を要するとした。
 同炉の運転認可はすでに、今年3月にフィンランド政府が発給済みだが、同企業連合としては機械システムと電気系統、および計測制御(I&C)系の最終的な確証試験は、注意深くかつ質の高いレベルで進めねばならないとしている。

 OL3は世界で初めて、欧州加圧水型炉(EPR)設計を採用して着工されたものの、初号機であるが故に規制関係文書の様々な確認作業や、土木工事等に想定外の時間を費やした。仏国で初めてEPR設計を採用したフラマンビル3号機も、原子炉容器鋼材や主蒸気配管溶接部の品質問題により完成が遅れているが、同じ設計で2009年と2010年に中国で着工した台山1、2号機については、建設工事が比較的順調に進展。それぞれ昨年12月と今年9月に営業運転を開始している。

 OL3の完成は当初、2009年に予定されていたが、これまでに数え切れない遅延が生じたことから、TVOは同炉の確実な起動と運転の継続を期すため、すでに設置済みの機器類でメンテナンスが必要だと指摘。スペア・パーツの製造・搬入にも時間がかかる見通しだが、同炉が完成すれば、フィンランドとしては地球温暖化への対処で最大級の措置を取ることになると強調した。送電網に初併入してから営業運転を開始するまでに、同炉は試運転段階の様々な出力で10億~30億kWhを生み出すと同社は予想している。

 TVOは2018年3月、建設工事の遅れにともない生じた損害の賠償について、仏アレバ社らの企業連合と和解契約を締結。同企業連合から分割払いで合計4億5,000万ユーロ(約546億円)を受け取ることになったほか、同建設プロジェクトの完結に特化したファンド・メカニズムを設定した。同メカニズムにはアレバ社らが資金調達するなど、同炉を完成させる2019年末までの保証期間を全面的にカバーする額を適切に確保。この期限までにOL3を完成できなかった場合、同企業連合はさらに4億ユーロ(約485億円)を上限とする罰金をTVO側に支払うことになっている。

 (参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月19日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)