エストニアのSMR建設プロジェクトにフォータム社とトラクテベル社が協力

2020年1月30日

©トラクテベル社

 北欧バルト三国の1つ、エストニアのエネルギー企業であるフェルミ・エネルギア社は1月28日、同国初の原子力発電プラントとなる小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた調査で、原子力発電所を運転するフィンランドの国営電気事業者のフォータム社、およびベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業であるトラクテベル・エンジー社の3者で協力覚書を締結したと発表した。

 フェルミ・エネルギア社は第4世代炉の導入を目的に、エストニア原子力産業界でSMR開発/建設を支持する専門家らが起ち上げた企業である。同国が加盟する欧州連合は(EU)2018年6月、バルト三国とポーランドを2025年末までに旧ソ連・東欧圏をカバーする旧ソ連の総合電力システム「IPS/UPS」から切り離し、欧州24か国が共同管理する「大陸欧州送電網」に統合するという政策ロードマップに全関係国が調印したと発表。ロシアからの電力輸入停止まで期限が迫っていることから、同社はSMRの形で原子力発電を国内に導入してEUの「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」目標の達成に貢献するとともに、エストニアのみならずバルト三国全体において、天候に左右されることなく信頼性の高いCO2排出ゼロnエネルギーを供給する体制を確立したいとしている。
 フェルミ・エネルギア社はすでに昨年9月、GE日立・ニュクリアエナジー社が開発中のSMR「BWRX-300」を国内で建設するための可能性調査の実施で同社と協力覚書を締結した。このほか、英国のモルテックス・エナジー社、カナダのテレストリアル・エナジー社、米国のニュースケール・パワー社それぞれが開発するSMRについても、国内で建設する選択肢として検討中と伝えられている。
 同社はまた、今回の発表のなかで使用済燃料の管理やSMR建設のスケジュール、計画立案等について、詳細に検討するための了解覚書締結に向け、欧州の原子力企業2社と協議中だと表明。これらの調査検討を年内に完了し、2021年初頭に公表する方針だ。

 今回の3者の協力覚書で最も意義深い側面として、同社は原子力発電事業者との実際の共同作業を通じて相互理解が得られる点を挙げた。原子力発電を導入するには様々な要素を徹底的に分析し、他のエネルギーオプションより競争力が備わるよう開発する必要があるとした上で、同社はすでに最良の解決策を見つける作業の初期段階にあり、後の段階で相互理解は一層深まることになると述べた。
 また、協力覚書の結果、同社はEU域内で最初のSMR建設プロジェクトを主導する企業となり、その建設ノウハウと能力でエストニアを支援する協力モデルが構築されると説明。SMRに適した許認可体制や軽水炉型SMRの事前立地調査等についても、3者で集中的に研究していく方針を明らかにした。

 (参照資料:フェルミ・エネルギア社(エストニア語)フォータム社トラクテベル・エンジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)