米GEH社、同社製SMR「BWRX-300」設計で規制委の先行安全審査開始

2020年1月31日

BWRX-300の断面図©GEパワー社

 米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は1月30日、同社製小型モジュール炉(SMR)の「BWRX-300」設計について、米原子力規制委員会(NRC)の許認可プロセスが昨年12月30日付けで正式に始まったと発表した。
 この日、多くの許認可申請に共通する安全審査事項をまとめた技術文書(許認可トピカルレポート:LTR)を初めてNRCに提出したもので、これによりNRCは同設計の先行安全審査を開始する。本格的な許認可プロセスの1つである設計認証(DC)審査の実施についてGEH社は何も言及していないが、LTRは顧客となる事業者が後に予備安全解析書(PSAR)を作成・提出する際、基礎的な文書になると説明している。

 発表によると「BWRX-300」は、2014年にNRCから設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化(BWR)」がベースになっており、自然循環技術や受動的安全システムなど画期的な技術を採用した電気出力30万kWの軽水炉型SMR。原子燃料としてはすでに承認された設計を利用するほか、機器類やサプライチェーンも技術的に実証済みのものを取り入れている。
 また、原子力産業界で深刻な課題となっているコスト面の対策として、同社は設計開発の全段階を通じてコストを目標内に収めるアプローチを採ったという。具体的には、設計の大幅な簡素化等によって「BWRX-300」の資本コストは従来型の大型炉やその他の軽水炉型SMRと比べて大幅に削減され、コスト的にコンバインドサイクル・ガス発電や再生可能エネルギーより競争力を持った設計になると強調している。

 「BWRX-300」で許認可プロセスが始まったことについて、GEH社のJ.ボール上級副社長は「商業化に向けた重要な節目になった」と指摘。CO2を排出しないエネルギー源への需要は世界的に高まりつつあるとした上で、「当社はSMRの画期的な技術に強い関心を抱いており、米国で許認可を取得する努力を継続していく」との決意を述べた。
 同社製「BWRX-300」については、これまでに北欧バルト三国のエストニアや東欧のポーランドが国内での建設に関心を表明、可能性調査の実施に向けた覚書がすでに現地企業との間で結ばれている。GEH社はまた、同設計をカナダでも建設可能にする方針で、カナダ原子力安全委員会が提供する許認可申請前設計審査(ベンダー審査)が始まったことを昨年5月に明らかにしている。

 (参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)