IEA:2019年に世界のCO2排出量「横ばい」に、日本は原子力の再稼働で4%減
国際エネルギー機関(IEA)は2月11日、世界のエネルギー部門から排出されるCO2の量が2019年は過去2年続いた増加傾向が停止し、2018年実績とほぼ同レベルの約330億トンだったと発表した。
世界経済が2.9%拡大するなか、CO2排出量がさらに増加するとの予想に反して「横ばい」となったのは、主に先進経済諸国で発電にともなう排出量が減少したからだと説明。これらの国では、風力や太陽光など再生可能エネルギーの役割が強化されるとともに、石炭火力から天然ガス火力への転換、原子力発電所の高稼働などが功を奏した。
日本については特に、近年再稼働を果たした商業炉により原子力発電量が40%拡大し、石炭や天然ガス、石油による発電量を押し下げたと指摘。CO2排出量も対前年比4,500万トン(4.3%)減の10億3,000万トンになったが、これは2009年以降最速の削減ペースであるとともに、発電部門での最大下げ幅になったと強調している。
「横ばい」の他の要因として、IEAはいくつかの国で気候が穏やかだったことと、新興国市場の一部で経済成長が鈍化したことなどを挙げた。このような結果についてF.ビロル事務局長は、「CO2排出量の増加傾向が一時的にただ停止したと言うよりも、2019年に決定的なピークを迎えたと後々に記憶されるよう、今こそ最大限の努力を傾注する必要がある」と明言。世界にはそのためのエネルギー技術が存在することから、それらはすべて活用しなければならない。IEAとしては、排出量の削減に向けて各国政府や企業、投資家、温暖化防止に純粋に取り組んでいるリーダー達との協力体制を構築中だとした。
同事務局長はまた、排出量の増加が止まったことは、この10年間で地球温暖化に立ち向かえるとする根拠になっていると説明。クリーン・エネルギーへの移行が進んでいる証であり、一層意欲的な政策や投資によってCO2の排出量に有意な変化をもたらすことができると示された。
このような目標の達成支援で、IEAは今年6月に「世界エネルギー見通し(WEO)特別報告書」を刊行する予定。2030年までにエネルギー関係のCO2排出量を3分の一削減し、世界を長期的な温暖化防止目標の達成に向かわせる方策を策定する。7月6日にはさらに、「クリーン・エネルギーへの移行サミット」をパリで開催し、主要各国の閣僚や関係企業のCEO、投資家などとともに意欲的な解決策を探るとしている。
IEAによると、先進経済諸国におけるCO2排出量の実質的な低下は、他の国で排出量が引き続き増加するのを相殺する結果になった。米国は国ベースの下げ幅が最大値を記録し、2019年は1億4,000万トン(2.9%)の削減となった。これにより、米国では2019年の排出量がピーク時の2000年から約10億トン削減されたことになる。欧州連合(EU)諸国の排出量も、2019年は発電部門の排出量が下がったため、全体で1億6,000万トン(5%)の排出量が削減された。原因としては天然ガスの発電量が初めて石炭火力を抜いたほか、風力発電量も石炭火力と肩を並べるまでに増加したとしている。
一方、残りの国々では2019年にCO2排出量が合計4億トン近くまで増大。増加分の約80%は、石炭火力発電量が引き続き上昇したアジア諸国のものだと指摘した。
先進経済諸国では各国ともに発電部門からの排出量が1980年代の後半レベルまで低下したが、この当時の電力需要量は現在の3分の一程度だった。これらの国々では、再生可能エネルギーや原子力による発電量の増加、石炭火力からガス火力への転換、電力需要量の低下などにともない、石炭火力の発電量が約15%低下している。
(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)