米トランプ大統領の2021会計年度予算教書、ユッカマウンテンの建設審査経費含めず

2020年2月13日

 米国のD.トランプ大統領は2月10日に2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の予算教書を公表し、エネルギー省(DOE)予算として2020年度で成立した予算レベルから8.1%減の354億ドルを要求していることを明らかにした。
 このうち13億6,000万ドルが原子力局(NE)予算で、新型炉の開発支援費用や「多目的試験炉(VTR)」の建設費用、国産ウランの備蓄経費などを含める一方、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料等の最終処分場関連では、同政権による例年の予算教書と異なり建設許可申請書の審査手続予算が含まれていない。原子力規制委員会(NRC)の2021会計年度予算要求でも同様で、DOE予算ではその代わりに、「(廃棄物の)中間貯蔵と放射性廃棄物基金の管理」プログラムに2,750万ドルを計上。放射性廃棄物を一時的に集中貯蔵する施設の開発・実行プログラムを進めるほか、原子力発電事業者から徴収した「放射性廃棄物基金」が他目的に流用されないよう監督を継続する。この中で、ユッカマウンテンの維持およびその環境要件とセキュリティ関連の活動も行うとしている。
 ユッカマウンテン関係でトランプ大統領は、2月7日のTwitterに「ネバダ州の意見を尊重する。これまでの政権は長年、持続的な解決策を見つけられなかったが、私の政権は革新的な解決アプローチを必ず探し出す」と投稿。これに対して、ネバダ州のS.シソラック州知事は2月10日、ユッカマウンテン関係費用が予算教書に含まれなかったことを歓迎する内容の書簡を担当官に手渡している。

 原子力に関して予算教書は、その他のエネルギー源と同様、国内エネルギー・ミックスにおける重要要素だとしており、様々な先進的原子力技術開発プログラムへの支援を約束。国内原子力産業の再生と諸外国に対する技術的競争力の強化に向けて、12億ドルを原子力研究開発(R&D)に充当した。この中では、高速中性子の照射施設となるVTRの建設費用として2億9,500万ドルを計上。民間セクターにおける新技術の開発・実証を支援する高速炉としては、最初のものになる。
 また、原子燃料サイクルの能力拡充を支援するため、予算教書は市場でウラン供給が途絶した場合の追加保証として、国内でウランの生産・転換・供給を行う制度の設置経費1億5,000万ドルを計上。これはトランプ大統領が昨年7月、「米国はウランの約93%を輸入するなど国産ウランの供給面で大きな課題に直面しており、これは国家的な安全保障問題だ」と判断、作業グループを設置したことに端を発している。
 予算教書はさらに、米国の原子力産業界が今なお苦慮している大きな課題の1つが使用済燃料の処分問題だと指摘。この課題は余りにも長期にわたり膠着状態にあるが、トランプ政権は使用済燃料の法的な引取・管理義務を全面的に履行する考えであり、ユッカマウンテンの足踏み状態をいつまでも傍観しているつもりはない。新たな推進力を得て前進するため、代わりとなる解決策や直ぐにでも実行可能な道筋の開発を始めていると強調した。
 予算教書ではこれと並行して、盤石な中間貯蔵プログラムの実施を支援する方針。国内の放射性廃棄物を貯蔵・輸送・処分する代替技術の研究開発、地元の受け入れ意欲が高まるような処分システムの開発を進めていくとしている。

 (参照資料:DOE予算教書(DOE分)NRCネバダ州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)