UAEの規制当局、初の商業炉バラカ1号機に運転許可 発給

2020年2月18日

2019年5月現在のバラカ発電所(1号機は右端)
©ENEC

 アラブ首長国連邦(UAE)初の原子力発電設備となるバラカ発電所で2018年3月に完成した1号機(韓国製140万kW級PWR)について、連邦原子力規制庁(FANR)は2月17日、運転管理会社のNAWAHエナジー社に60年間有効な運転許可を発給したと発表した。
 アラブ諸国にとっても初の商業炉である同炉で安全な運転を保証するため、FANRは1万4千ページにおよぶ運転許可申請書を審査。その際、原子炉の設計や安全性その他に関して、すべての規制要件との完璧な適合性確保を目指して、185件以上の広範な点検を行うとともに約2千件の追加情報を請求している。この申請書は、UAEで原子力発電の導入を担当する首長国原子力会社(ENEC)が2015年3月、当時の建設進捗率が約70%だった1号機について、発足前のNAWAHエナジー社に代わって提出していたものである。
 審査の結果、FANRは1号機の運転・保守に関する要件がすべて満たされていると承認。NAWAHエナジー社は今後、FANRによる24時間体制の点検の下、起動プロセスの第一段階として、同炉に燃料集合体を安全に装荷するための最終的な準備作業を進めるとした。年内の営業運転開始を目指して、数か月間にわたって出力上昇試験を含む試運転を実施すると見られている。

 同発電所では現在、1号機と同型設計の2号機~4号機の建設工事が同時並行で行われている。2号機の進捗率がすでに95%以上に達しているほか、3号機は92%以上、4号機も83%以上となっている。4基すべてが送電を開始すれば、UAEでは総電力需要量の約25%が賄われる見通しである。
 1号機の完成以降、NAWAHエナジー社および同社の親会社であるENECは、燃料の初装荷日程を先送りして運転員の訓練など営業運転の準備作業を進めつつ、国際原子力機関(IAEA)を始めとする国内外複数の規制関連機関に1号機の安全性評価を依頼。先月下旬には、世界原子力発電事業者協会(WANO)の専門家チームが同炉で起動前審査(PSUR)を行い、安全な起動と運転を保証する要件すべてが遵守されていると結論付けていた。

 1号機の運転許可発給について、アブダビ首長国のムハンマド皇太子兼UAE軍副最高司令官はTwitterで、「原子力の平和利用開発を推進するという我が国の政策方針の中で新たな章が刻まれた」とコメントした。
 IAEAに常駐するUAEのH.アル・カービ大使も、「今回の判断はIAEAや韓国、その他の国際的な規制機関との集中的な共同作業と協力の賜物だ」と評価。UAEの原子力発電プログラムと規制の枠組には、IAEAの安全基準と国際的な良好事例に則して進めることが明記されている点を指摘した。
 FANRのC.ヴィクトールソン事務局長は、UAEが安全・セキュリティや核不拡散関係の厳しい国際基準を満たすため、過去10年間にIAEAから11もの大型ピアレビュー・ミッションを受け入れ、原子力インフラや法・規制システム、緊急時対策に至るまで、様々な側面から評価を受けた事実に言及している。

 (参照資料:NAWAHエナジー社FANRの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)