米TVA、クリンチリバーで建設するSMRの経済的実行可能性改善でオークリッジ研と協力

2020年2月21日

©ORNL

 米テネシー州にあるエネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)とテネシー峡谷開発公社(TVA)は2月19日、TVAが州内のクリンチリバー・サイト(=写真)で建設する小型モジュール炉(SMR)など先進的原子炉設計について、コスト面での有効性などを評価するため、協力覚書を締結したと発表した。
 TVAは昨年12月、同サイトで2基以上、合計電気出力80万kW以下のSMR建設を想定した「事前サイト許可(ESP)」を米原子力規制委員会(NRC)から取得。ESPは20年間有効だが、現時点で採用設計が確定していないため、今回の覚書の下で両者は協力して、可能性のある先進的原子炉設計について許認可手続と建設、運転・維持にともなう経済的実行可能性の改善方法を探る。実際に原子炉建設が決まった場合、TVAはNRCに対して別途、建設・運転一括認可(COL)を申請する必要がある。
 両者の今回の協力は、双方の原子力関係能力や資産を活用するこれまでの協力関係に基づいている。TVAのワッツバー2号機が2016年10月に営業運転を開始した際、ORNLはコンピューターのモデリング技術を用いて同炉における最初の6か月間の運転をシミュレートした実績がある。

 両者の発表によると、評価対象とする原子炉設計は具体的に、工期が短くて柔軟な運転が可能、かつ低コストでCO2を排出しないもの。評価を行う重要分野としては、先進的な建設技術の開発やサイト・インフラ支援のための総合的開発能力、経済的な建設を促進する様々な機能の基盤、先進的製造技術における技術革新、規制要件や安全要件を一層効果的に遵守できる技術基盤を挙げている。
 ORNLはこれまでDOEの国家プログラムの中で、新しい材料物質やプロセス、最先端技術の開発と活用によって、多くの電気事業者が発電技術を改良したり技術革新を図れるようにする研究活動を続けてきた。今回の覚書を通じてTVAは、ORNLの保有する科学的知見のほかに、「高中性子束・同位体生産炉」や世界最速のスーパーコンピューターが置かれている「オークリッジ・リーダーシップ・コンピューティング施設(OLCF)」、「製造実証施設(MDF)」といった世界最先端の施設を利用することが可能になる。

 ORNLのT.ザカリア所長は、「世界を牽引するORNLの研究能力とTVAの運転経験を組み合わせて、コスト面の効率性が高い次世代の原子力発電を促進したい」と表明。「原子力は長年にわたって米国のエネルギー構成における重要な要素であり、CO2を出さない発電技術への要望の高まりは、我々が今後も安全で効率的かつ価格も適切な原子力発電を取り入れることを求めている」と述べた。

 (参照資料:ORNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)