仏国最古のフェッセンハイム1号機が予定通り永久閉鎖
仏国内すべての原子力発電所を所有・運転するフランス電力(EDF)は2月22日、昨年9月に公表していた通り、稼働中の商業炉としては最も古く1977年に運転開始したフェッセンハイム原子力発電所(=写真)1号機(PWR、92万kW)を永久閉鎖したと発表した。2月19日の官報ではすでに、同炉の運転認可を無効化する政令が22日付けで発効すると発表されており、これに続いて2号機(PWR、92万kW)も6月30日に永久閉鎖する予定。仏国政府はこれにより、原子力と再生可能エネルギーの間で発電電力量のバランスを取っていく戦略の第一歩を踏み出したと指摘。これと同時に、2022年までに石炭火力発電所の全廃を目指すなど、発電部門からのCO2排出量の削減努力も継続するとしている。
同発電所の閉鎖は、2015年8月に成立した「緑の成長に向けたエネルギー移行法」を受けて、約75%の原子力発電シェアを2025年までに50%まで削減するとともに、原子力発電設備を2015年当時のレベルの6,320万kWに制限するための施策となる。元々はF.オランド大統領(当時)が公約していたものだが、2025年までに削減するのは実質的に不可能との判断から、E.マクロン大統領は2018年11月、「エネルギーと地球温暖化に関する仏国戦略」の中で目標の達成を10年先送りし、2035年にすると表明。フェッセンハイムの2基を含め、2035年までに合計14基の90万kW級原子炉を永久閉鎖する方針である。
仏国では現在、フラマンビル3号機(PWR、163万kW)が同国初の欧州加圧水型炉(EPR)として建設中であるため、EDFはこれと引き替えにフェッセンハイム1、2号機を早期閉鎖する条件として、「運転認可の無効化はFL3が起動した日にのみ有効にすること」などを2017年に理事会決定していた。しかしFL3では2018年7月、主蒸気管を含む2次系配管の溶接部に品質のバラ付きが認められたため、燃料の初装荷はさらに遅れて2022年末になる見通し。このためEDFは2019年9月、FL3の完成を待たずにフェッセンハイムの2基を閉鎖すると決定。1、2号機をそれぞれ、2020年2月と6月に永久閉鎖するため申請書を規制当局と環境連帯移行省に提出していた。
なお、仏国政府はフェッセンハイム発電所の閉鎖が地元の不利益につながることがないよう、2018年から地元自治体の職員らとフェッセンハイムの将来プロジェクトを検討。地元のコミュニティや企業、組合などとも協力し、発電所職員の再教育や地域の再活性化を盛り込んだ戦略を2019年2月に完成させた。同発電所が立地するオー=ラン県を欧州規模の低炭素経済基準地区とするため、技術革新部門を基盤とする経済によって持続的な雇用を生み出し、社会経済的な転換を図るとしている。
(参照資料:EDF(仏語)、仏国政府(仏語)、環境連帯移行省(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)