カナダ原研、USNC社製SMRの燃料製造研究等で協力協定締結
カナダ原子力研究所(CNL)は2月26日、昨年7月に設置した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」で支援する最初の小型モジュール炉(SMR)研究プロジェクトとして、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)のSMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(=右図)を選定し、同社の子会社であるUSNC-パワー社と協力協定を締結したと発表した。この協力では主に、MMRで使用する「完全なセラミック・マイクロカプセル化(FCM)燃料」の製造研究やMMR用黒鉛炉心の照射プログラム策定、CNLチョークリバー・サイトにおける燃料分析検査室の設置などをカバー。カナダのプロジェクト開発企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社はすでに昨年4月、USNC社のパートナー企業として、MMRをCNLチョークリバー・サイト内で建設するための「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。今回の協力では、チョークリバー・サイトでのFCM製造施設建設に向けた実行可能性調査の準備活動や、MMRの炉心や燃料の設計妥当性を確認する試験プログラム開発が含まれる。
CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」のなかで、2026年までにオンタリオ州にあるチョークリバー・サイトでSMRを建設するとの意欲的な目標を設定。関連企業からは、SMR原型炉や実証炉の建設で15件以上の関心表明書を受け取った。
これに続いてCNLは2018年4月、チョークリバーを含むCNLの管理サイトで実際にSMR実証炉を建設・運転するプロジェクトの提案を募集。第1回目となるこの募集で、同年6月にはスターコア・ニュークリア社やU-バッテリー・カナダ社など国内外のSMR開発企業4社から提案があったという。
CNLはこのほか、SMR開発を支援するコスト分担方式の研究開発イニシアチブとして、CNRIを2019年に設置している。1年単位のCNRIプログラムを通じて、CNLは世界中のSMRベンダーにCNLの専門的知見や世界レベルの研究設備を提供。カナダにおけるSMRの研究開発と建設を促進し、SMR技術の商業化を加速する計画である。
USNC社はCNLが昨年11月、CNRIの初回の支援対象候補に選定した4社の1つで、残り3社(英モルテックス・エナジー社、米Kirosパワー社、加テレストリアル・エナジー社)の提案に関してCNLは現在、審査と交渉の様々な段階にあるとした。今回の協力取り決めにより、USNC社とCNLはMMRの多様な側面の中でも特に、燃料の開発・試験を検討。CNL側からは150万カナダドル(約1億2,000万円)相当の現物出資が行われ、2021年春までに完了する予定である。
CNLとの協力に関してUSNC社のF.ベネリCEOは、「当社製SMR設計の実行可能性とFCM燃料の特殊な優位性を実証する重要な機会になる」と説明している。
(参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)