世界初の「華龍一号」設計の福清5号機で温態機能試験が完了

2020年3月4日

©CNNC

 中国核工業集団公司(CNNC)は3月2日、世界初の「華龍一号」設計採用炉として2015年5月に着工した福建省の福清原子力発電所5号機(PWR、115万kW)(=写真)で、温態機能試験が概ね完了したと発表した。
 「華龍一号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)双方の第3世代設計を一本化して開発したPWR設計で、中国が知的財産権を保有。現在、福清5号機を含め中国国内で合計5基が建設中であるほか、輸出用の主力設計として国外の原子力市場で積極的な売り込みが進められている。
 温態機能試験が完了したことで、CNNCは同炉の年内の送電開始に向けて盤石な基盤が築かれたと指摘。同じ設計を採用して5号機の7か月後に着工した同6号機、およびCGNが2015年12月から2016年12月にかけて、CGN版の「華龍一号」設計で着工した広西省の防城港3、4号機(各PWR、118万kW)は、いずれも同設計の実証炉プロジェクトと位置付けられており、これらすべてが年内に送電開始可能と見られる。
 さらに、これらに続いてCNNC傘下の中核国電漳州能源公司が昨年10月、「華龍一号」設計による漳州1号機(PWR、115万kW)を福建省で本格着工している。

 機能試験は、系統毎の機能やプラント全体の出力上昇等を試験するために行われる。プラント系統の構成や流量などを可能な限り模擬する常温・常圧の冷態機能試験と、これに続いて原子炉冷却系を高温・高圧状態にした上で実施する温態機能試験があり、福清5号機では1次系と2次系および補助システムの機能を全面的に確認。CNNCは動的と静的両方の安全システムや蒸気タービンなど、原子炉系統とタービン系統の機器すべてで設計要件通りのパラメーターが得られたとしている。

 中国国内では建設中の5基に続いて、CGNの寧徳5、6号機(各PWR、108.9万kW)建設計画、および漳州2号機(PWR、115万kW)の建設計画で「華龍一号」の採用が決まっている。国際展開については、パキスタンで2015年8月と2016年5月にそれぞれ着工したカラチ2、3号機(各PWR、110万kW)に同設計が採用されており、2号機ではすでに昨年6月、格納容器にドーム屋根が設置された。
 また、EDFエナジー社が英国で建設予定のブラッドウェルB原子力発電所(110万kWのPWR×2基)も同じ設計になることから、同国の規制当局は2017年1月から「華龍一号」設計の英国版について「包括的設計審査(GDA)」を実施中。同審査は今年2月に最終段階の第4ステップに進展しており、2021年後半に設計容認確認書(DAC)が発給される見通しである。

 (参照資料:CNNCの発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)