米原子力発電所の2019年の安全性パフォーマンス評価、全ユニットが最良カテゴリーに

2020年3月10日

 米原子力規制委員会(NRC)は3月5日、国内全96基の商業炉における2019年の年間運転実績評価で、すべてのユニットを最良のパフォーマンス・カテゴリーに分類したと発表した。
 NRCの「原子炉監督プロセス(ROP)」で各原子力発電所の運転データを安全・セキュリティ分野のパフォーマンス指標に基づいて評価したところ、すべての商業炉が設定目標を全面的に達成していたもの。過去20年間における監督プロセスの中で初めてと伝えられており、これらの炉で適用される検査プログラムも最低限実施する通常のベースライン検査に留まることになる。
 NRCは今後、春から夏にかけて、このような年間評価結果の詳細を議論する公開討論会やイベントを各原子力発電所の近郊で開催する予定。年間評価の結果に関する書簡はすでに各発電所の事業者宛てに送付したほか、今後の点検プランについても通達済みだとしている。

 ROPの実施にともなう運転データの提出は四半期毎に各原子力発電所事業者に義務付けられており、NRCスタッフは評価結果を事業者に伝えるとともに、追加検査が必要と判断したものについては検査官を送るなどの対応をとっている。原子力発電の利用に際する住民の健康と安全性確保を最大目標に、(1)原子炉安全、(2)放射線安全、(3)テロ等に対する予防措置、という3つの主要な戦略的パフォーマンス分野を特定。これらを評価するため、安全性に関わる7つの重要側面(起因する初期事象、事象の影響緩和システム、バリアの健全性、緊急時対策、公衆の放射線防護、所内の放射線防護、物理的な防護措置)について検査を実施している。また、これらの重要側面に影響する3つの分野横断的要素――人的パフォーマンス、問題点の特定と解決、安全性を重視した作業環境――についても監督を行っている。

 前回、2018年末現在のROPでNRCは、全98基中4基の商業炉について「安全上の重要度の低い1~2項目について課題を解決する必要あり」と判定したほか、1基については「監視活動を大幅に強化する必要あり」と評価していた。今回、ベースライン検査プログラムからの逸脱基数が最少になったことについて、米原子力エネルギー協会(NEI)のD.トゥルー副理事長は、地元紙のインタビューで「原子炉の適切なレベル評価において、NRCが安全性に関わる事象に一層の重きを置くようプロセスを変更したから」と指摘。各原子炉で性能の改善が図られたことも、安全性関係の課題が少なくなった一因だと説明している。

 (参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)