米NEI、パンデミック時の燃料交換など原子力発電所への支援をエネ省長官に要請

2020年3月26日

©NEI

 米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長(=写真)は3月20日、エネルギー省(DOE)のD.ブルイエット長官に書簡を送り、新型コロナウイルスによる感染が世界的な流行(パンデミック)となる中、国内原子力発電所でこの春に燃料交換やメンテナンスを実施する際、必要となる支援の提供を要請した。

 同理事長はまず、「パンデミック対応時に特に重要となる送電網の維持で原子力発電所は必須のインフラである」と国土安全保障省が位置付けている点に言及。実際に国内の原子力発電所では、パンデミック時にも運転を継続できるよう複数段階のプランを設定し、地元の状況に応じてすでに実行中である。
 これまでのところ全国の原子力発電所は順調に運転を続けているが、これらは18か月毎あるいは24か月毎に取替用の新燃料を装荷する必要があり、その他のメンテナンスも含めて2~4週間、稼働できない期間があるという点をDOE長官に伝えておきたいとした。
 燃料交換は通常、電力需要量が最も少なくなる春や秋頃に行われ、発電所毎に数100人規模の専門作業員が30~60日間動員されるが、これらの作業員が宿泊するホテルや地元住民宅、食事のためのレストラン等が必要である。また、このような作業に使われる医療用レベルの手袋やマスク、使い捨ての消毒布や体温計といった放射線防護のための個人用装備がパンデミック時には不足することが予想される。

 コースニック理事長によると、米国では今春、21州に立地する32の原子力発電所が燃料交換を予定しており、これらを含めた原子力発電所ではすでに、このような作業期間中にコロナウイルスのリスクを最小限に抑える予防的措置が取られている。具体的には、具合の悪い従業員を自宅待機とすることや感染者数の多い国に最近渡航した従業員の除外、発電所ゲートにおける従業員や契約請負作業員等の健康チェック、カフェテリアなど従業員が集まる場所の閉鎖や入場制限などを挙げた。
 その上で同理事長は、国内の原子力部門が発電所の運転や経済活動を途絶させないために、DOEの支援を緊急に必要とする個別のアクションを以下のように特定した。国内のエネルギー需要を、今日だけでなく明日以降も長期的に、また、安全で信頼性が高く価格も適正な原子力発電で満たせるよう、これらに対する政府の助力が不可欠だと訴えている。
・原子力発電所の運転や燃料交換など、重要業務の担当従業員を連邦政府が確認する、
・これらの重要業務の履行にともない作業員の発電所への移動を許可する、
・これらの重要業務の履行に必要な宿泊所や飲食物の提供サービス等を維持する、
・発電所サイトや宿泊所、飲食物のサービス施設などへ移動で、作業員が州境やコミュニティの境界を自由に越えることを許可する、
・放射線防護のための個人用装備や新型コロナウイルスの検査キットなどを原子力作業員が優先的に入手できるようにする、
・高度に特殊な技能を有する外国人作業員が米国に入国することを許可する、である。

 (参照資料:NEIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)