低濃縮ウランと研究炉用燃料交換でイラン、トルコ、ブラジルが合意
イラン、ブラジル、トルコの三首脳は17日、テヘランで会談し、イランが保有する低濃縮ウラン1200kgをトルコに搬出することで合意し共同宣言を発表した(写真:イラン大統領を中心に合意を祝う三首脳)。これによりトルコは、低濃縮ウランを国際原子力機関(IAEA)とイランの監視のもと保管し、イランは低濃縮ウランと引き換えに、テヘラン研究炉(TRR)用に必要な120kgの燃料を米国、ロシア、フランス、IAEAからなるグループ(通称:ウィーン・グループ)から受け取ることになる。
TRRは医療用アイソトープ製造炉であり、燃料となる19.75%濃縮ウラン235は海外から供給されてきたが、現在、同炉は新燃料の装荷が必要になっている模様。
国連安保理による制裁にもかかわらず、アフマディネジャド大統領は今年はじめ、イラン原子力庁(AEOI)に対し19.75%濃縮ウラン製造を指示したと伝えられている。これは、90%以上の濃縮が必要といわれている兵器級の4分の1に相当する濃縮度である。
これまでイランは、低濃縮ウランを国外に搬出し、それを研究炉用に濃縮・加工した形で受け取る方式を拒否してきたが、今回の合意では、イランが低濃縮ウラン搬出で妥協した格好になった。
3国の共同宣言によると、イランは1週間以内に合意についてIAEAに公式通知することになっているが、ウィーングループ側も燃料交換について合意する必要がある。共同宣言には、?イランは国内濃縮ウランの半分以上を占めるといわれる1200kgを1ヶ月以内にトルコに預ける、?ウィーングループは1年以内に120kgの研究用燃料をイランに供給する、と明記している。この約束が守られない場合、トルコは、イランの要請に基づき迅速かつ無条件でイランに低濃縮ウランを返還することになっている。
今回の共同宣言は、外交による問題解決の道を開くことにはなったものの、研究炉に対する燃料問題だけであり、イランの濃縮計画続行そのものの解決には至っていない。
(2010年5月17日付WNN)
(原産協会・国際部まとめ)