世界のエネルギー、今後25年で5割増 ―― 米EIA予測
米国エネルギー情報局(EIA)は、途上国の経済成長が、エネルギー消費を押し上げ、2035年までの25年間で、世界のエネルギー消費量は49%増大するとの報告書を取りまとめた。「国際エネルギー・アウトルック2010」と題する報告書によると、レファレンスケース(標準ケース)ではOECD加盟国を除くアジア、中東地域でのエネルギー需要が際立って高い伸び率を示すと見通している。概要次の通り。
○ 非OECD国のエネルギー需要は、2035年までに84%増であり、ほとんどの国が2007-2009年の景気後退以前に予測された経済成長率に戻ることになる。OECD加盟国のエネルギー需要は14%の増加が見込まれる。インド、中国は引き続き世界のエネルギー需要を牽引し、2025年までに両国を合わせたエネルギー需要は倍増、両国が世界のエネルギーの3割を消費することになる。
○ エネルギー消費を制限する政策が導入されなければ、化石燃料、特に石炭は2035年においても最大のエネルギー消費率を占めることになる。化石燃料は2035年には世界のエネルギー総需のうち3/4以上を供給し、二酸化炭素の排出量は43%増になる。
○ しかしながら、長期的に見ると排出量の見通しは“大きな不確実性”を有している。
電力需要は87%増
世界の電力需要や原子力の見通しについて同報告書は、以下の通り予測している。
○ 2015年までに景気後退以前の状況が回復し、2035年には87%増になる。再生可能エネルギーは、全ての選択肢のなかで最も高い成長率を示し、年間3%増、2007年のシェア18%から2035年には23%となる。一方、石炭火力は規制にもかかわらず、2.3%/年で増加する。
○ 地球温暖化ガス排出への懸念とあいまって、2003年から2008年にかけてのエネルギー価格の高騰は、長期的には原子力と再生可能エネルギー利用をさらに推し進めることにつながった。化石燃料の価格高騰は、原子力の高い資本費にもかかわらず、石炭と比べ原子力の経済競争力を高める結果となった。
○ 世界の多くの原子力発電所は高稼働率であり、OECDおよび非OECDユーラシアの国々において古い原子力発電所の長寿命化が承認されることになる。
○ 原子力発電電力量は2%/年の伸びを示し、2035年には4.51兆kWh になる。この量は2007年の2.59兆kWhに比べ約75%の増加である。
○ しかし、全体から見れば原子力の発電比率は、2007年の13.8%から2035年の12.8%とわずかに減少する。
○原子力発電の最も高い伸び率は、非OECDのアジア諸国であり、特に中国、インドでは2035年までに年間7.7%増、それに続き中南米では4.3%増となる。
EIAは米国エネルギー省の統計・分析機関であり、今回の報告書は、米国のエネルギー動向を予測した「年次エネルギー・アウトルック2010」に続くもの。両報告書とも2035年までを見通している。
(2010年5月27日付WNN)
(原産協会・国際部まとめ)