原発運転延長問題で(2) ドイツの電力会社、戦々恐々 木口壮一郎(ジャーナリスト)

2010年6月17日

ドイツの原子力発電事業者にとって、メルケル政権は本来、頼もしい味方のはずである。


なにしろ1998年の反原子力連立政権の誕生から、昨年9月末の総選挙まで、原子力事業者はさんざん痛めつけられてきた。新規原子力発電所の建設は禁じられ、既存発電所も割り当てられた発電枠を使い果たせばただちに閉鎖となった。


そこで脱原子力政策の転換を訴えて政権交代したのだから、事業者にとって救世主となるのが当然のように思われた。


しかし、現実はそう甘くなかった。前回報告したような、国政与党勢力が参議院で過半数割れに追い込まれた、という事情を言いたいのではない。


原子力政策を積極的に推進していく、という力強い意気込みが、最初からメルケル政権に感じられないのだ。政権発足後すでに7か月余りたつのに、原子力発電所の運転期間延長問題で依然として迷走を続けている。将来の見通しが立たないことは、電力会社にとって、投資判断の観点から、非常に困ったことである。